これからが本番である。福田政権の下で成立した国家公務員制度改革基本法に基づく政府の作業が本格化している。公務員の幹部人事の一元管理を行うため新設する内閣人事局の制度設計が当面の焦点となる。
縦割り行政の弊害を人事管理から見直すことで政治主導の実現を狙った基本法だが、麻生太郎首相が改革にどんな姿勢でのぞむかは必ずしも明確でない。
政府内には来年度予算編成に間に合わせるため人事局のあり方の結論を急ぐべきだとする意見もある。だが、拙速は骨抜きにつながる。人事一元化の司令塔に足る機能を備えるよう、腰を据え議論すべきである。
基本法はさきの通常国会で与党と民主党が修正合意のうえ成立させた法律だ。中央省庁の幹部人事については官房長官が候補名簿を作り、首相や閣僚と協議して決める方法に変更する。内閣官房に新設する人事局でこうした人事を一元管理することにした。
同法は13年までの改革実現を目指したプログラム法で、人事局に関しては来年夏までに設置法案を国会に提出する。このため、政府の公務員制度改革推進本部は同局をどんな体制とするかの議論を優先している。
官房長官に幹部人事の権限を与え官邸主導を目指した基本法だが、人事局に独自の評価機能とスタッフを備えなければ、実際はこれまでの各省人事と変わらなくなる。政治主導の人事を実現する一方で、公務員に求められる中立性をどう担保していくかも難題だ。
それだけでない。基本法はキャリア制度である1種試験を廃止し新たな試験区分に変更することも定めている。採用から退職まで一貫した流れの中で官僚をどう、養成していくのか。単純に幹部人事を一元化しただけでは「国益より省益」を求める縦割りの悪弊は改まるまい。
こうした課題に総合的に取り組める陣容を人事局で整えなければならない。にもかかわらず、政府内には各省の人事関係部局の単なる移し変えでお茶を濁そうとする動きもあるという。これでは改革そのものの骨抜きにつながりかねない。有識者で構成する顧問会議の意見も踏まえ、じっくりと調整を進めてほしい。
福田政権の退陣や行革担当相の相次ぐ交代など、政治の混乱や空白状態はともすれば、官僚ペースでの作業進行を助長しがちだ。首相はさきの所信表明演説で官僚について「私と私の内閣にとって敵ではない」と語った。信賞必罰でのぞむ姿勢も強調したが、小泉構造改革の流れをくむ公務員制度改革に必ずしも熱心でない、との見方もある。
しかし、与党に民主党も加えた合意の上に基本法が成立した重みを忘れてはならない。人事局をどう仕上げるかは、その姿勢が問われる試金石である。
毎日新聞 2008年10月27日 東京朝刊