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社説

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原油急落―ホッとしつつ学ぶ教訓

 原油がニューヨークで1バレル=147ドルの史上最高値を記録したのは、ほんの3カ月前のことだ。天井知らずと思われた高騰が世界を震撼(しんかん)させた。それが一転しての急降下だ。先週はピークの半値以下、60ドル台前半まで下げた。

 急落は、米国の金融危機で投機マネーが逃げ出した影響が大きい。

 それに輪をかけているのが需要の減少だ。金融危機の火の手が各国へ広がり、世界同時不況が避けられなくなった。そうなればエネルギー需要は減る。すでに足元でも、世界の原油需要の2〜3%分、日量200万バレル以上が減ったとの見方も出ている。

 危機感を抱いた石油輸出国機構(OPEC)は先週末、臨時総会を開き150万バレルの減産を決めた。価格下落で大きな打撃を受けた加盟国から大幅減産を求める強硬論が強く、比較的大きな減産幅となった。

 日本の人々の暮らしや経済活動にとって、原油価格の下落は朗報だ。海外の不況や円高による輸出企業の業績悪化、株安による逆資産効果など、景気には悪材料ばかりがめだつ。そのなかで企業や家計の負担を減らす原油急落は、数少ないプラスの材料だ。

 今年に入ってからのうなぎ登りの原油暴騰は、日本経済に深刻な打撃を与えていた。ガソリン価格や電気料金、航空料金が上昇。行楽客が減り、燃油コストの負担増で長距離トラック業者や水産業者らから悲鳴があがった。政府も省エネ投資への補助などの対策を打ち出したものの、抜本的な解決策が見あたらない状態だった。

 世界同時不況と輸出減少という大嵐を乗り切るために、このプラス材料を大切に活用したい。

 混迷する世界経済のなかで、当面は下落が続くかもしれない。ただ中長期的に考えれば、世界の人口はまだまだ増える見通しだ。発展する中国、インドという新興大国の需要が、今後も膨らみ続けるのはまちがいない。

 この需要を満たすには、辺地や深海の油田やオイルサンドなど、コストが高い石油を開発せねばならない。「それには60〜70ドルの価格が必要」とみられている。だとすると、いずれ世界経済が安定を取り戻せば、原油には再び高値圧力がかかる時が来る。

 さらに、新エネルギーの開発や省エネ努力を採算に乗せ加速させるには、原油がある程度は高くなくてはならない。地球温暖化を抑えるため、エネルギーが高価格になることを覚悟しておくべきだ。盛り上がってきた脱石油の熱を冷ましてはならない。

 重い教訓はまだある。投機マネーの暴走だ。投機マネーは世界金融危機を生み、原油や食糧の暴騰、暴落をもたらした。来月15日に開かれる緊急サミットでは、その抑制策について突っ込んで話し合ってもらいたい。

学術研究―女性の力を生かす大学に

 「大学の女性研究者を増やすために真剣に努力します」

 東京大や京都大など国立の主要7大学の学長が先月末、男女共同参画をテーマにしたシンポジウムに顔をそろえ、こう宣言した。

 共同宣言は「公正な評価に基づく女性研究者の積極的登用」に知恵を絞るという。学長たちのリーダーシップで、思い切って進めてほしい。

 研究者のうちに女性が占める割合は日本では12.4%。先進国の中で際だって低い。たとえば米国は34%、英国は26%である。

 独創的な発想が大切な学術研究の場には、多様な個性が欠かせない。とりわけ人口が減る時代、天の半分を支える女性の力を生かさない手はない。

 女性の活躍が期待されているのにまだまだ少なく、重点的に増やすことが必要な分野として、内閣府は今春、公務員、医師と並んで研究者を挙げた。

 先週施行された研究開発力強化法も、女性の力を生かすことをうたう。

 実は、女性比率で全国平均を下回るのが国立の主要大学だ。共同宣言は現状への反省があってのことだろう。

 具体的な対策も、少しずつ始まってはいる。

 名古屋大は04年、「業績が同等なら女性を積極的に採用する」という方針を掲げた。教授や准教授への女性の応募が増える傾向があるといい、女性比率も11.7%で、7大学中トップだ。

 北海道大が06年から始めた制度では、女性を採用したら、その人件費の4分の1を大学本部が学部に補助する。能力が同じなら女性を採用した方が得になる、というわけだ。

 文部科学省も来年度から大学や研究機関に、女性研究者を採用するごとに600万円を支給する。

 一方で、女性が研究を続けていくためには、育児や介護など家庭生活との両立をしやすくするとともに、出産・育児による中断が不利にならずに復帰できる仕組みも大切だ。

 文科省は06年から、保育所をつくったり研究の補助者をつけたりする女性研究者支援モデル育成事業を、私大を含む全国の大学で始めている。

 お茶の水女子大は、5時以降は公的な会議をしない、というユニークな原則を決めた。

 よい仕組みは全国に広げてほしい。環境が整えば、採用する側も安心して女性を選べるようになるだろう。

 学部別、あるいは教授などポスト別に、女性割合のデータもぜひ公表してほしい。努力の結果も見えてくる。

 女性にとって働きやすい職場は、男性にとっても働きやすいはずだ。そんな環境であってこそ、次代を担う若者を引きつけることができる。7大学の共同宣言を機に、女性が活躍できる場をもっと広げていきたい。

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