裁判員制実施が近づいてきてることもあって、各地で模擬裁判が行われてるんです。で、12月15日の朝日新聞朝刊1面に面白い記事が載ってたんです。内容は、ある架空の事件を裁判員を含めて裁いたところ、東京地裁では懲役6年の有罪だったが、千葉地裁では無罪だった、という記事。これは興味深いニュースだ。同じ事件を審理してこの結果だからね。懲役の年数にバラつきが出るのは仕方ないとしても、有罪無罪という根本の部分で違いが出てくるとは…。検察官としては、どこにスポットを当てて立証するかが裁判員制度のカギになってくるんだろうね。
でも、この記事でホントに面白いのは裁判官と裁判員の評議の結果。
東京地裁−−−裁判官(プロ)3人と裁判員(素人)4人が有罪。裁判員(素人)2人が無罪。
千葉地裁−−−裁判官(プロ)3人が有罪。裁判員(素人)6人が無罪。
どっちの裁判所でも、プロは全員有罪なんだよね。なんか面白い。ホントの裁判員制度では、この結果は発表されないから、この記事は貴重ですね。
先週はこれといった裁判がなかったので、12月6日に行われた、裁判の話。
被告人は、八木揺一(34)。罪名は児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反。東京青山クリニック総院長による買春ということで、マスコミでも大きく報じられたのでご存知の方は多いでしょう。
報道によると、出会い系サイトを通じて、高校2年の女子生徒(16)とわいせつな行為をしたとして逮捕されたもので、調べによると、今年7月18日、出会い系サイトで知り合いになった都内の高校2年の女子生徒に現金5万円を渡し、わいせつな行為をしたという。
八木は、この女子生徒と知り合った今年2月以降、3回に渡ってわいせつな行為を繰り返していたそうで、補導された女子生徒の供述から、犯行が発覚した。八木は連絡をする際、他人名義の携帯電話を使用しており、ヤミ携帯屋から購入。昨年から出会い系サイトへの書き込みをはじめ、中高生4〜5人と肉体関係を持ったと供述した。これが大まかな流れだけど、東京青山クリニックって言ったら、全国展開してる有名な美容外科ですよ。そんな一流のクリニックの総院長という立派な立場にありながら、こんなくだらないことで逮捕とは…。
さて、裁判は、被告人に名前や住所などを聞いてから、起訴状の朗読です。
検察官 「裁判長! 起訴状の朗読に先立ちまして、被害児童の氏名を匿名で…」
と、検察官からの提案。わいせつ関連の裁判では被害女性の実名を読み上げないのが通例なんで、検察官がこういうことを言ったんですね。すると、驚くべきことに裁判長が、
裁判長 「私の公判では、法令に基づいて認めていませんので、実名でお願いします」
と、匿名の朗読を却下ですよ。この裁判長の裁判は何度も見てるけど、初めてのケースのような気がするなぁ。
で、起訴状によると、報道されたほかに今年8月3日、他の女子高生(16)に8万円の現金を渡し性交した、と。起訴されたのはこの2つのようです。
冒頭陳述によれば、被告人は5月から妻と暮らす自宅とは別にマンションの一室を借りていた(出会い系サイトで知り合った女性を呼ぶための部屋なのかはわからず)。妻には秘密にしていた他人名義の携帯電話を闇サイトで購入し、出会い系サイトを利用し、援助交際を繰り返していた。その際、ドン・キホーテで購入したセーラー服を持参し、女性に着せていたという。
さらに検察官は、被告人が援助交際を繰り返していたことを証明するために、起訴されている女性以外にも女子高生3人とヘルス嬢2人(年齢は分からず)と、援助交際相手として連絡をとっていることも明らかにしてました。なんで、こっちの方は起訴されていないのか、よく分からないんだけど。
それに加えて、妻帯者でありながら、逮捕当時、高校2年の女子高生と交際中であったという証拠も。ホントに高校生が好きなんだろうな。好きになった人がたまたま高校生だったというよりは、高校生という肩書きが好きなのでは? という印象もぬぐえないけど。
そんな被告人に対し、弁護人からの質問です。
弁護人 「被害児童とは何で知り合ったんですか?」
被告人 「出会い系サイトです」
弁護人 「その時、使っていた携帯電話はこの先も必要ですか?」
被告人 「もう、いりません」
弁護人 「被害児童にセックス以外の行為、暴力を振るったりとかは?」
被告人 「そういうことはしておりません」
性行為以外のことをしてると、罪名が変わってくるのかね。さらに弁護人は質問します。
弁護人 「調書を見るとね、あなたが足で踏まれて喜んだって被害児童が証言してるみたいなんだけど」
被告人 「いえ。被害児童がツンツン足でやってきて、互いにツンツンやってたんです。それだけなんです」
ツンツンの度合いが分からないから、踏まれたのかどうかは分からないんだけど。もし踏まれたとしても暴行してたんじゃなく、暴行されてたってことだよね。関係あるのかなぁ。
弁護人 「ニュースやインターネットの書き込みで、非難を受けたようですが」
被告人 「大変大きい罪を犯したと思いましたし、自分の行為が発端ですから、真摯に受け止めたいです」
弁護人 「あと、仕事の方はどうなりましたか?」
被告人 「刑事処分を待って解雇、と手紙が来ました」
弁護人 「それだけの罪を犯したってこと、分かりました?」
被告人 「十分、分かりました。すみませんでした」
と、反省の弁を述べて終了。次は、女性の検察官からの被告人質問です。
検察官 「起訴されているほかに、援助交際した女性って何人くらいいるんですか?」
被告人 「えっと、それは18歳以上の…」
裁判長 「未満! 未満! 検察官もちゃんと聞いてくださいね」
被告人 「ないです」
検察官 「18歳以上では何人?」
被告人 「1人です」
検察官 「警察では、17歳の女性と…と答えてるけど、思い出せませんか?」
被告人 「…覚えていません」
検察官 「被害者が制服を着た写真も撮っていますよね」
被告人 「いや、それはないと思います」
検察官 「被害者が嘘をついている、と」
被告人 「そうかもしれません…」
なんとも歯切れの悪い返答に、女性検察官は感情的になって質問を始めるのです。
検察官 「いつから出会い系サイトを利用して援助交際してたんですか」
被告人 「今年の初めから…」
検察官 「生中出しで5万円! とか、メールを見ると手馴れてるんですけど! 中出しでやったことあるんですか?」
被告人 「ないです」
さらに、女性検察官は怒りをあらわにして、
検察官 「私が信じられない! と思ったのは、交際相手が妊娠して手術をする前日に逮捕されたわけですよね! どんな気持ちで援助交際を続けてたんですか!」
これが事実とすれば、ひどい話だ。性に関してだらしないと言うか。この質問に対し、なんて答えるのかと思ってたら、
裁判長 「それ、本件と関係ない。検察官、質問を変えてください」
と、裁判長が一言。確かに、事件そのものとは直接関係ないんだけれども。この一言に検察官は冷静さを取り戻したのか、被告人に反省の言葉を言わせて、質問終了。
最後は裁判長から。
裁判長 「18歳未満の女性にこういうことしたら、法に触れるってわかってました?」
被告人 「はい」
裁判長 「メールのやり取りを見ると(相手が)『16だけど平気?』って聞いてるのに(被告人は)『16だと高校生?』って返事してるよね」
被告人 「調子に乗ってたと思います」
裁判長 「携帯電話はいらないって言ってたけど、それで同じことはしないって言い切れます?」
被告人 「知り合う機会が断たれるので」
裁判長 「今回の件、何が悪いんだと思ってます?」
被告人 「未来ある児童に対し、汚れた大人が対価を支払ってそういう行為をすることで…」
と、長々と述べようとするのをさえぎって、
裁判長 「もちろん、被害者に対してってのもあるよね。それだけじゃなくて、この法律の前文を読んでもらえればわかると思うんだけど、18歳未満の児童の人権を守るために作られた法律なんです。少なくとも、私はそうだと思っています。だから、あなたのやった行為と言うのは、社会に対する犯罪ですよ!」
と、一喝です。なるほど、そういうことか。それで検察官の「どんな気持ちで援助交際を・・・」という質問を却下したわけね。彼女に対する気持ちは関係ないんだな。
それにしても、誰が援助交際なんて名づけたんだろ。援助なんて単語が入ってると、いいことをしてるような感じがするんだけど、単なる買春だからね。女性の立場で言えば、売春。需要があるから供給があるのか。供給があるから需要があるのか知らないけど、女性の方に刑事責任は問われないんだよね。
で、この裁判で被害児童の匿名を認めなかったのは、人権を守ってもらう立場なのに自ら出会い系サイトで売春相手を探したっていうせめてもの罰なんじゃないかなぁ。
分別つかない子供じゃなく、心身ともに十分大人の高校生を児童ってくくることが違和感があるよな。
ま、被告人が一番悪いのはいうまでもないが。
nikkansportsより
でもなんか裁判って、人間が下す結果だから、感情的なところでちゃうよねっ。(・。・)