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2008年10月27日

◎サポート薬剤師 小児医療の側面支援に期待

 子どもの健康や医療相談の担い手として、石川県と県薬剤師会が養成に乗り出す「サポ ート薬剤師」を小児医療を側面から支える一翼にしたい。医師不足や厳しい勤務環境が指摘される小児医療の現場を改善するためには医師を取り巻く専門職を上手に活用する必要があり、薬剤師はその代表的な存在と言える。

 小児科医に過酷な勤務を強いる背景には、風邪のような比較的軽い症状でも夜間に子ど もを受診させるなど保護者の過度の不安感があると言われる。地域の薬剤師が相談に応じて不安を取り除き、受診の可否まで適切にアドバイスできれば小児科医の肩にかかる重い負担も軽減できるだろう。

 「かかりつけ薬局」という言葉が言われて久しいが、薬局が医療相談拠点として機能す るには、薬剤師が医師に準じた存在として地域から信頼を得ることが欠かせない。研修制度を充実させ、「医療人」としての資質を高めてほしい。

 「サポート薬剤師」を養成する研修は今月から県内三カ所で順次開催される。金大附属 病院や県小児科医会から講師を招き、服薬指導などを学ぶ。認定者は薬局・薬店にシンボルステッカーを掲げ、相談拠点をアピールする。県は百五十人の認定を目標にしている。

 薬局は病院や小児科医院が受け付け終了後も開店しており、とくに夜間や休日の相談業 務に期待がかかる。子どもは説明能力が十分でなく、症状を把握する場合にはコミュニケーション能力も求められるだろう。

 厚生労働省が医師不足解消を目指して六月にまとめた「安心と希望の医療確保ビジョン 」では、在宅医療や介護の推進拠点として薬局の役割を高めることが強調されている。薬剤師養成の教育年限も二〇〇六年度に四年から六年に延長された。より高度な医療知識をもった人材が増えていけば、薬剤師が担う医療行為が今以上に広がることも予想される。

 その点で「サポート薬剤師」制度は、地域医療の充実へ向け、薬剤師の存在感を高める 試金石にもなる。県は薬剤師会や大学との連携を強化し、やがて世に出る六年制の人材も含め、薬剤師の積極活用をさらに考えてほしい。

◎道路財源1兆円交付 一般財源化の道筋が先決

 麻生太郎首相が追加経済対策の一つとして、来年度から一般財源化が閣議決定された道 路特定財源のうち一兆円を地方への臨時交付金に回すよう指示した。自治体の単独事業を増やし、地方経済のテコ入れを図る狙いであるが、道路特定財源を具体的にどう一般財源化するかという本論がわきに置かれたままであり、唐突な選挙対策の印象がぬぐえない。地方振興の意欲はよしとしても、地方分権に密接にかかわる一般財源化の道筋を明確にすることが先決ではないか。

 現在、道路整備関係に使途が限定される揮発油税や軽油引取税などの税収は、今年度当 初予算で約五兆四千億円に上る。この道路特定財源を道路整備以外にも使えるようにする基本方針は今年五月、福田内閣の下で閣議決定され、政府の骨太方針にも書き込まれた。これは妥当な措置であるが、一般財源化を具体化する議論はまだほとんど進んでいない。

 一般財源化の閣議決定には、いわゆる道路族議員や地方の要望に配慮して「必要と判断 される道路は着実に整備する」との一文が盛り込まれている。国土交通省は一般財源化後も道路整備に優先的に使われるべきとして、来年度予算の概算要求では、今年度予算を上回る道路整備関係費を求めている。これに対して、厚生労働省は社会保障費への使用を要求するなど、省庁の分捕り合戦が激しくなりそうな気配である。今後の自民党や政府の税制調査会の議論も難航は必至で、首相の強い指導力と政治決断が必要になろう。

 一方、全国知事会などは一般財源化後も引き続き地方分の三兆四千億円を確保するよう 求め、配分方法として税源移譲や贈与税化、新たな交付金創設といった案を提示している。道路特定財源の一般財源化は、分権改革のかなめである税財源の移譲と不可分である。自治体は地方税財政の三位一体改革で国からの交付金が減り、財政難に陥っているが、道路特定財源の一般財源化の本筋が不明確なまま、いきなり一兆円の臨時交付金を支給すると言われても、素直に喜ぶわけにはいくまい。


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