文部科学省は25日、東京都文京区内の住宅地の倉庫に、放射線を出す物質約15万個が保管されていたと発表した。倉庫を所有する男性は必要な手続きをとっておらず、周辺では最大で、自然に受ける年間放射線量の8倍を超える放射線量と推定される量が測定された。同省は「男性や周辺住民に健康被害の恐れはない」と説明しているが、男性を指導し、物質を安全な場所に移動させた。
同省によると、保管されていたのは、合成樹脂のベークライト。1個の大きさは縦3センチ、横3センチ、高さ0・5センチ、重さは約14グラム。5月から保管されていた。男性が23日に「放射線を出すがどうしたらいいか」と同省に相談した。
同省が調べた結果、表面から1時間あたり2・8または4マイクロシーベルトの放射線を出す同じ大きさの2種があることが判明。10メートル以内の隣接民家では、5月以降最大19ミリシーベルトの放射線量と推定された。同省は「健康被害が発生する線量の10分の1以下」としているが、合成樹脂の移動を指導。男性は5月まで保管していた長野県内にすべて移し、周囲を立ち入り禁止にしたという。
同省によると、男性は約20年前に合成樹脂を入手。約5年前に検査機関で放射線が出ていることを確認、家庭用風呂で温泉効果のある入浴剤として販売する計画だったらしい。同省原子力安全課は「何らかの法律に違反する可能性もあるが、前例のない事案で困惑している」と話す。【江口一】
毎日新聞 2008年10月26日 東京朝刊