とうとう決まったか。いささか残念な思いでニュースを聞いた。東京・銀座の歌舞伎座が二〇一〇年四月末で閉鎖され、建て替えられることになった。
ビルが立ち並ぶ繁華街の中で、瓦屋根が青空に映える純日本風桃山式の外観はひときわ異彩を放つ存在だ。歌舞伎を一年を通して上演する専門劇場として、全国からファンが訪れる。
百二十年前に開場したが、大震災や空襲を経て、現在の建物になったのは一九五一年だ。三年前に建て替え構想が発表された。老朽化が著しく、耐震性に問題があるという。国の有形文化財に登録されているが、取り壊しなどへの規制はなく、日本建築学会が文化財としての保存改修を求めていた。
外観が絵になるだけではない。歴代の名優が踏んだ舞台、年輪を刻んだ内装には重みがある。古典芸能の殿堂にふさわしい風情にあふれ、外国人観光客にも人気のスポットだ。劇場そのものが日本文化のシンボルといえる。
来年一月からの「さよなら公演」の後、三年の工期を経て、オフィスを併せ持つ複合ビルに生まれ変わる。新劇場の概要は年明けにも発表の予定だ。
現状はバリアフリー化も遅れている。時代に合わせた見直しは必要に違いない。名建築が発信してきた日本文化が今後にどう生かされるか、注目したい。