きょう二十六日は岡山県知事選の投票日だ。前回二〇〇四年の投票率は37・99%と過去二番目の低水準だった。地方分権が進む時代である。有権者は、県の将来を明るくするためにも投票所へ足を運び、県政に参加する意欲をみせてほしい。
知事選は、無所属現職で四選を目指す石井正弘氏と、無所属新人で桃太郎のからくり博物館館長の住宅正人氏の一騎打ちである。期日前投票は、前回に比べて増えている。有権者の関心が高まっているなら喜ばしい。
前回のような低い投票率は回避しなければならない。年代別に前回投票率を見ると、若い層の選挙離れが目立った。二十―二十四歳は18・19%にとどまり、二十五―二十九歳、三十―三十四歳は30%に届かなかった。
岡山県選挙管理委員会は、投票を呼び掛けるポスターなどに「大好きなおかやまを想(おも)うから。トーヒョーへ行こう!」の標語とともに初めて漫画を使った。インパクトがあり、選挙を身近に感じてもらう狙いだ。JR岡山駅にも漫画の入った横断幕が設置され、カップルやサラリーマンら漫画の登場人物が「オレらも行くぜ!投票に。」「選挙だぁぁぁ!」などと熱く叫んでいる。効果を期待したい。
棄権した人から「だれが知事になっても同じ」「世の中は変えようがない」といった声が聞かれる。しかし、無関心こそがよりよい政治の敵であることを知っておきたい。有権者がそっぽを向いたり、あきらめたりしたら政治は活力を失おう。
自分の周囲をじっくり点検すれば、不平や不満が見つかるはずだ。自然環境や交通事情、教育、子育て、医療や介護、まちのにぎわいなどで問題が発見できれば、こうあってほしい、こんな政策が重要だとの思いが持てるに違いない。
知事選の二人の候補者は、マニフェスト(公約集)を発表している。石井氏は行財政改革の断行などを掲げ、住宅氏は県財政構造改革プランの白紙撤回などを主張する。両氏とも、重点施策の数値目標や達成期限を提示し、公約に重みを持たせる。しっかり読み込めば、候補者の訴えの違いが分かり、投票判断に役立とう。
岡山県は財政が厳しい。しかも、米国発の金融危機の影響で世界同時不況が懸念されるようになった。困難な時代のかじ取りには、大胆な政治力が大切だ。有権者が真剣に票を投じることで、政治に緊張感が生まれる。地域間競争が激しくなっているだけに、リーダー選びに有権者の責任は重いことを肝に銘じよう。
世界的な株安連鎖と為替市場の混乱に見舞われる中で、北京で開かれたアジア欧州会議(ASEM)首脳会議は、金融危機を克服するため国際社会が結束して行動するよう訴える議長声明を採択し閉幕した。
議長声明では、金融危機が国際金融システムと世界経済に「深刻な影響をもたらしている」として、金融市場の安定がアジアと欧州の持続的成長の鍵であるとした。金融の混乱や景気減速が保護貿易主義の台頭をもたらす懸念を指摘し、世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の進展への努力も呼び掛けている。
ASEMに加盟していない米国の金融システムが機能不全に陥る中で、アジアと欧州が協調して積極的に新しい金融秩序構築に取り組む姿勢を打ち出した意義は大きい。混乱を増す金融市場への強い危機感の表れとともに、新しい秩序づくりで主導権を握りたい欧州勢にとって、経済成長著しい中国やインドなどアジア主要国との共同歩調が欠かせないということだろう。
会議では、国際通貨・金融システムの包括的改革についての緊急声明も発表した。金融危機で深刻な影響を受けている国々を支援するため国際通貨基金(IMF)が重要な役割を果たすべきだとし、その機能充実も求めた。金融工学を駆使した金融商品が危機を拡大させた反省から、証券化商品などへの規制整備も促している。
今回の首脳会議が、ワシントンで十一月に開かれる金融危機対策の緊急首脳会合(サミット)の地ならしとなったのは間違いない。サミットでアジアと欧州が足並みをそろえて米国に迫り、どれだけ実効性のある金融対策をまとめることができるかが問われる。日本の主導力が重要だ。
(2008年10月26日掲載)