米カリフォルニア州カリストガ(CNN) 広い家に住み、大きな車を乗り回す。米国人が理想の生活として描いてきたそんなイメージに、変化が起きつつあるようだ。当地の建設業、ビル・カストリノさんは最近、夫婦で面積14平方メートルの家に移り住んだ。質素な生活の快適さに目覚め、同じような住宅を売り出したところ、順調な業績が上がっているという。
「大きいことが良いことだとは、もう思わない」と、ビルさんは満足げに胸を張る。その隣で妻のシャロンさんがうなずいた。「隣人と張り合う必要もなくなって、肩の荷が下りた気分。小さいことは悪くない、むしろ良い面のほうが多いかもしれません」
夫妻は170平方メートル近くあったマイホームから、このおもちゃのような小屋へ引っ越した。1階部分は約9平方メートルで、台所やリビングスペース、バスルームなどが配置されている。はしごを上った2階部分は、5平方メートルほどの空間にベッドを置いた寝室スペース。車輪のついた移動式住宅で、現在は娘一家の敷地に設置。周囲は、平均的な一戸建てが7000万円以上という住宅地だ。
ビルさんたちはこの家を1万5000ドル(約147万円)で手に入れた。月々の光熱費はわずか15ドル(約1470円)。収納しきれない洋服などは、車に置いている。前の家では毎月1500ドル(約14万7000円)のローンを払い、光熱費に160ドル(約1万5700円)もかかっていた。「もちろん、持ち物はかなり処分して、すっかりシンプルな生活になった」という。
もともと建設業界にいたビルさんは、超小型住宅の建築、販売に乗り出すことに。過去半年間で、150万−200万円前後の家が11棟売れた。顧客は年金生活者や生活保護世帯など。昨今の経済情勢を反映して、問い合わせの件数は増える一方だという。
当地にほど近い街セバストポールにも、似たような「合理化」を思い立った男性がいる。超小型デザイナー住宅の設計を手がけるジェイ・シェーファーさん。面積わずか6平方メートルの家を建てたこともある。小さいながらも、木目調のインテリアや作り付けの本棚など、工夫を凝らした内装が特長だ。
シェーファーさん自身が暮らす家の面積も、わずか9・3平方メートル。「ローンもなくなって、生活費は年間150万円程度。好きな仕事をして、貯金もしながら外食だって楽しめる。心配事がまったくない生活というのは、何物にも代えがたい」と、穏やかな表情で語った。