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2008年10月26日

◎留学生の就職 産学官連携で支援体制を

 北陸の企業で、地元大学に留学している外国人学生を採用する動きが広がっている。グ ローバルな事業展開を行う企業にとって、優秀な外国人の雇用は国際競争力を強化する上で重要な課題である。政府も大学もこれまで留学生の受け入れに力を入れてきたが、卒業後の国内での就職支援、いわば出口対策はまだまだ不十分であり、産学官が連携して留学生の就職支援体制を整えることが求められている。

 政府は昨年度から「アジア人財資金構想」と銘打った事業を開始し、日本の大学に留学 し、日本企業への就職を望む高度な海外人材の育成に本腰を入れるようになった。北陸でも金大や富大、北陸先端科技大学院大がその事業に参加しており、機械電子工学や情報、創薬関係などの高度な知識・技術を持った留学生の教育とインターンシップなどを通した就職支援事業を始めている。

 アジアなどの有能な留学生を取り込んで経済成長を図る取り組みを国家戦略として本格 化させたわけであるが、政府だけでなく地域戦略としても留学生の就職支援の在り方を考えてもらいたい。

 たとえば、日本での就職を希望する留学生は大企業、有名企業志向が圧倒的に強い。本 国に帰り再就職する場合に有利という計算もあるのだろうが、日本では地方の中堅、中小企業に優秀な企業が多いことをもっと知ってもらう努力が必要である。また、就職に必要なビジネス日本語の指導を、地域の大学が共同で行うことも考えられるのではないか。

 大学側の課題の一つとして、指導教員に実際のビジネス経験がないことが挙げられる。 その点をカバーする大学・企業の連携プレーを留学生教育でも強化する必要があろう。日本の企業文化や日本的経営について留学生に認識してもらい、企業側も留学生の職業観などを理解する機会を増やすことも大事である、そうした取り組みは企業と留学生のいわゆるミスマッチ解消にも役立つ。

 産学官が協力して留学生が地元企業に就職しやすい環境にすることは、地域の優位性や 吸引力の底上げにもつながろう。

◎汚染米不正防止 流通管理制度の整備急務

 農林水産省は汚染米不正転売事件を受けて、コメ流通システムの見直しに着手し、対応 策として、流通経路の追跡を可能にするトレーサビリティー(生産履歴)制度の導入などを検討している。食品のトレーサビリティー制度は事業者のコスト負担が伴うため、導入に抵抗感も根強いが、食品の安全確保のため国際的な流れとなっている。食品の偽装なども頻発しているなか、消費者に安心を与えるしっかりした流通管理制度の確立を急ぎたい。

 トレーサビリティー制度は、食品の生産、加工、販売の各段階の情報を記録し、問題が 生じた場合に食品の流通経路を追跡して原因究明や商品回収、消費者への情報提供を迅速に行えるようにするシステムである。牛海綿状脳症(BSE)問題を機に、国内処理された牛肉については、二〇〇三年から牛肉トレーサビリティー法で導入が義務付けられている。

 しかし、牛肉以外の食品は適用外で、生産、加工、流通の記録保管は食品衛生法上の「 努力義務」にとどまっている。今回の見直し作業では、欧州連合(EU)や米国などと同様に記録保存の義務化を考えざるをえまい。

 トレーサビリティー制度の導入には、ICタグ(電子荷札)などを使った情報システム の費用や人件費などの問題があり、農水省の〇五年調査で同制度を導入している食品事業者は、一部導入も含めて36%にとどまる。導入にコストと時間がかかり、それに見合ったメリットが見えにくいことなどが壁になっているといわれる。しかし、商品自体の品質はもとより、生産、流通管理の質を高めることが求められ、それが付加価値にもなると認識して、積極的に制度を導入してもらいたい。

 また、コメ流通の見直しでは、コメ関連商品の原料米の原産国表示を義務化することに 加え、コメ販売業者を登録制から届け出制に変更した〇四年の改正食糧法の再考も迫られている。不正転売事件で怪しげな業者の介在が目についたからだ。流通の規制緩和が不正の要因になったのかどうか、よく調査してもらいたい。


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