鳥取県の九月定例議会最終日の十四日、六会派十八議員が提案した施行停止中の人権侵害救済条例を廃止する条例案は「継続審査」とする総務警察常任委員長報告を無記名投票で採決した結果、賛成二十二、反対十二で継続審査に決まった。当初の可決見通しが一転したのは、議員間の調整不足と政治力学が作用した点が背景にあるが、不可解さは残る。「議会の常識」「議員発議の重み」が問われる結果といえそうだ。
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人権条例廃止案の継続審議の可否投票を行う議員=14日、県議会
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廃止条例案は八日の本会議に提案された。
議案提案書には自民党クラブ、自由民主、公明党、共産党、えがりて、きずなの議員が名を連ねたが、手続き、連名議員の構成や原文確認をめぐって会派、議員間で「ちゃんと話した」「何も聞いてない」とする水掛け論に発展。直前まで混迷を極めた。
本会議では、藤縄喜和(自由民主)、浜田妙子(きずな)、錦織陽子(共産党)の三議員が施行停止中の条例について「法的効力は事実上消滅している」「議員自らの手で責任を果たすべき」「メンツにこだわった廃止先送りは許されない」と委員長報告に反対の立場で討論。
これ対し、前田八寿彦(自民党)、山田幸夫(信)の二議員は執行部が新たな救済策を検討中であることなどを挙げ「唐突で拙速。廃止する必然性はない」「見直し検討委の意見書は議員提出の人権条例が根拠」と継続審査に賛成討論した。
本会議採決では廃止条例案に名を連ねた十八議員のうち六議員が“離脱”した。議員の意思表示が第三者に分からない無記名投票となったことに一部から不満の声が上がり、閉会後、自由民主の議員が鉄永幸紀議長に抗議する一幕もあった。
継続審査になったことについて、平井伸治知事は「人権条例に代わる措置の検討を急ぐことに変わりはない」と述べ、年度内を目安に県の方針を議会に提示する意向。県は公務員による人権侵害▽子どもの人権救済▽差別禁止−の三分野で新たな救済策を検討しているが、「見直し検討委の意見書は条例を必ずつくれというものではない。自治体には条例制定権に限界があり、三つすべてを整備できるどうか。政策でカバーできるところもあるのではないか」と話している。