星野ＷＢＣ監督には陰謀が隠されているのではないか

　奇妙な事態になってきた。去る１５日の体制検討会議で星野監督に一本化したはずのＷＢＣ監督問題が、イチローの発言でガラッと雲行きが変わってきたからだ。

　いや、奇妙といえばそもそも星野監督がＷＢＣ監督候補の最右翼になること自体が不可解。なにしろ監督として３度出場した日本シリーズで、一度も勝てなかった短期決戦下手。北京五輪でも「金メダルを取る」と豪語しながら、案の定、メダルなしに終わった。

　しかも北京の惨敗を真摯（しんし）に反省するどころか、言い訳に終始。能力に加えてその潔くない態度に、野球ファンだけでなく国民からも監督失格の烙印（らくいん）を押されている。日本代表を率いる監督として、日本中でもっともふさわしくないのが星野仙一であることは誰の目にも明らかだ。

●「誰がやっても連覇は難しい」

　にもかかわらず加藤コミッショナー、王特別顧問ら検討会議の出席者は星野監督に傾いている。

　となるとそこには何か巨大な勢力が動いているか、あるいは何か陰謀でもあるのでは、と疑われても仕方があるまい。もともとＷＢＣのアジアラウンドを主催する読売グループは興行面での話題性から「王監督か星野監督」を主張していた。「王監督がダメなら星野で」とメンバーに働きかけたのかも知れないし、実際、会議の前に王特別顧問は巨人の渡辺会長と会談している。

　だが、王監督はともかく、国民を敵に回した星野監督では話題性はあっても、興行面ではむしろマイナスだろう。となると考えられるのはファンの反発は百も承知で、あえて星野監督にやらせることだ。反発だけではない。ヘボ采配の星野監督が指揮を執れば、ＷＢＣの連覇が危うい。それでなくとも今回は、よりシビアな戦いを余儀なくされる。

　前回監督の王特別顧問も、「前回の優勝はラッキーな面があった。今回は地元のアメリカをはじめ、他の国も目の色を変えてくる。アジア予選（日本、韓国、台湾、中国から２カ国）ですら楽ではない」と認めるほど厳しい戦いになる。そんな戦いを監督・星野に任せれば、北京に続いて赤っ恥をかくのは目に見えている。その結果はどうなるか。いくら言い訳しても、２度も日本野球の威信を傷つければ、球界における星野監督の発言力、影響力の大幅低下は避けられない。野球人として球界にとどまることすら危ぶまれる事態になりかねない。

●金権、暴力体質に根強い嫌悪感

　それが関係者の星野擁立の狙いだとすれば納得がいくが、だとすれば、なぜそこまで排除されるのか。プロ野球を含めた野球界には星野監督の金権体質、暴力体質に対して根強い嫌悪感がある。アマチュア野球界のドンだった山本英一郎氏（元日本野球連盟会長＝故人）は生前、しばしばこう言っていた。

「カネに汚い星野を北京五輪監督にしては絶対ダメだ。五輪もカネ儲けに利用する」

　実際、北京五輪後の８月２８日付の日本経済新聞に「ホシノドリームズプロジェクト」の全面広告を出したのは記憶に新しい。代表監督の肩書を使い、１社当たり３００万円出資の協賛企業を集めるための説明会の広告だった。

　中日監督当時、若手の選手に鉄拳制裁を加えたことはよく知られている。その殴る、蹴るの指導はアマ球界にも伝わり、ある年、中日のスカウトが高校球界のスラッガーにドラフトで指名するので挨拶に行ったところ、「星野監督は選手を殴ったりするのでしょう。そんな監督のところにはもう行きたくない」と入団を断られたそうだ。　

　こうした話はホンの一例にすぎない。その正体が明らかになるにつれ、星野監督はプロ野球界のイメージをダウンさせ、ファン離れを起こさせる存在になっているのである。ＷＢＣの体制検討会議のメンバーは長く球界に身を置く、一時代を築いたプロ中のプロだ。星野監督の手腕、人間性はよく知っているはずだ。「星野ＷＢＣ監督」は、そんな男の球界追放という思惑が隠されているのなら、話のつじつまは合う。

　野村監督は星野監督で一本化した１５日の体制検討会議を「出来レースではないか」と言ったが、そこに何か不穏な空気を感じたからかも知れない。

　もっともイチロー発言で事態は急展開。すでに星野監督は事実上、球界の表舞台から降りざるを得なくなったようである。

（日刊ゲンダイ2008年10月22日掲載）