コラム「格闘技インサイド」=文・安田拡了
プロレス業界に活躍の場 ヒール亀田史郎氏
最近、亀田史郎氏の話題がスポーツ紙面を飾ることがなくなった。プロレス的な発想からするとあれほどの“悪の逸材”をほっておくなんて実にもったいない。
何をやってるんだスポーツ紙!と怒鳴ってみたくなる。
昨年10月のWBC世界フライ級王者内藤大介との試合でレスリングまがいの反則を繰り返した亀田大毅に反則行為の指示をしたとしてセコンドライセンス無期限停止という厳重処分。
確かにやったことは社会的ルールからすると野放しにできない。厳重に取り締まり、処分を下さねばならない。しかしそれはそれ、あれほど生々しいキャラクターの男はざらにいるものではない。
ヒールとしては朝青龍の何倍も面白い。
ボクシング業界で手に余るのならぜひプロレス業界にきてもらいたい。
世間でマイナスになることもプロレス業界に入ると途端にヒールとしてプラスになる。
暴れん坊とセコンドライセンス無期限停止の“肩書”を引っ提げて史郎氏だけでもプロレス入りしてもらえばプロレス業界は確実に面白くなるはずだ。
とはいってもいまのプロレス業界にそういう発想をする人は少なくなった。
リングではいろんなトラブルの中で闘っているのに生ではトラブルを避けたい環境になっているからだ。
昨年の亀田事件の時、そのキャラクターに目を付けて亀田親子に手を差し伸べたのはなんとアントニオ猪木だけだった。
さすが猪木だなと思ったが、いつの間にか立ち消えになってしまった。
猪木と興行のタッグを組んでいるのは一般企業で社会常識の枠の中で行動する以上、世間から白い目で見られるのを嫌がったのかもしれない。また猪木の発想を実現するスタッフがいなかったからかもしれない。
かつて猪木が当時のボクシング世界ヘビー級王者モハメッド・アリと格闘技世界一決定戦を行った。その実現に精力的に動いたのは大番頭の新間寿氏だった。
そういうエネルギッシュなスタッフがいないのだろう。猪木さん、新間さんとは組まないの?そうすりゃあIGFはがぜん面白くなるのだが…。(スポーツライター)
(2008年2月7日更新)
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