来春医師になる医学生が臨床研修先を決める「マッチング」の結果が公表された。研修医の希望が都市部の病院に集中し、地方に少ない地域格差が、あらためて浮き彫りになっている。
マッチングは、医学生と病院の双方の希望に基づく。研修医が集まらない病院は、その理由を自ら分析して、研修プログラムの魅力を高める努力をすることが、まずは求められる。
ただ、スタッフ層の厚さや症例数など、地方のハンディは大きい。医学生が自由に研修先を選べる今の方式では、研修医が都市部に流れるのは必然だ。大学病院も例外ではない。その結果、地方の医師不足に拍車がかかっている。
臨床研修の2年間は、医師としての基礎をつくる期間である。新人医師が地域医療の現場でプライマリーケア(初期診療)の経験を積み、地域の人びとから学ぶ意義は大きい。国は、研修医が地方にもあまねく配置されるよう、研修制度を改善すべきだ。
マッチングで最も人気が高かったのは東京都で、募集定員に対して確保できた学生の割合(充足率)は91%を超えた。次いで沖縄、神奈川、福岡と続く。逆に、富山、鳥取、長崎、高知、島根は、充足率が5割を割り込んだ。
長野県内は28病院が計204人を募集し、111人が集まった。研修希望者の数では都道府県別で16位だが、充足率では下から12位だった。
見逃せないのは、県内でも格差があることだ。県厚生連佐久総合病院や松本市の相沢病院など6病院は、充足率100%。一方で、13病院は希望者ゼロ。中山間地の病院の苦戦が目立つ。
特色あるプログラムを打ち出せるかが、かぎになる。地方病院は地元とのつながりが強く、患者とのコミュニケーションも深まりやすい。県内では、他の病院や施設と連携して、病院から在宅まで地域医療を一貫して学べるプログラムを整え、研修医を確保した中山間地の病院もある。
先端医療や専門分野を学べる大学病院との連携と、役割分担の明確化は、研修の幅を広げる。
厚生労働省などは、研修医が都市部に偏らないよう、募集定員の見直しを始めている。加えて、医学生自身が地域医療を重視し、熱意を持てる医学教育の充実が重要である。
そもそも医師が足りないために研修医の養成が思うにまかせない地方病院もある。勤務医の待遇の底上げが不可欠だ。