コラム「格闘技インサイド」=文・安田拡了

実力あるボクサーに名古屋移住のススメ

 ■小堀に冷たかった東京
 取材のため東京に引っ越してから15年余りたつが、最近の東京は実に物足りない。
 というのはご飯を食べようと思うとどこにでもある全国チェーン店ばかりで食事をする張り合いがないのだ。
 ここ15年くらいでわたしの知っている安くてうまかったそば屋とかてんぷら屋などが次々に廃業してしまった。その場所に新しいビルが建てられっているから立ち退かされたのだろう。でいまやチェーン店ばかりが新規オープン。全く味気ない。
 そこへいくとやっぱり名古屋はいい。ひつまぶし、どて、みそ煮込みうどん、みそカツ、台湾ラーメン…。
 名古屋には歴史と文化がある。名古屋市民が地元を誇りに思い、愛しているものがある。それをなくさないというのは素晴らしいことだ。
 19日、プロボクシングの世界初挑戦の小堀佑介(角海老宝石)がWBAライト級王者ホセ・アルファロ(ニカラグア)を3ラウンドTKOで破って新王者になった。
 驚いたのは世界タイトルマッチだというのに地上波のテレビ中継がなかったこと。しかも会場が1000人も入らないディファ有明。
 ところが試合内容はすごかった。2ラウンドに2度ダウンを奪われながらなんとラウンド回2分8秒、左フックを浴びせて逆転TKO。世界的プロモーターのドン・キングも「最後まであきらめない日本人スピリットを見せてもらった」と大絶賛だった。
 翌朝、テレビに出演するのかなと思っていたが、わたしの知る限り、それもなし。東京のテレビ局は実に冷たい。もしも小堀が名古屋のジムだったら連日、名古屋ではテレビ出演だろうに…。
 そこで思う。
 実力のあるボクサーたちよ、世界戦をやりたければ名古屋のジムに移籍しなさい!
 そうすれば世界タイトルマッチには地上波テレビだってつきます。しかも名古屋人は地元ジム出身の実力派ボクサーは大切にしてくれます。
 その証拠に畑中、薬師寺、飯田、戸高といろんな世界王者が生まれているじゃあありませんか。
 亀田兄弟にうつつを抜かしていて小堀の世界戦を放送しない東京の地上波テレビ局など当てにしていたらいいボクサーは育ちません。
 世界王者になりたい若者は東京に行かずに名古屋を目指そう。(スポーツライター)

(2008年5月23日更新)




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