コラム「格闘技インサイド」=文・安田拡了

名古屋の格闘技界を支え続けた「公武道」

 名古屋・大須に武道具店の「公武堂」がある。そこの長谷川匡紀社長は自らも格闘技をやるエネルギッシュな人物だ。
 わたしは20年ほど前に名古屋タイムズ社を退社して「格闘技通信」誌(ベースボールマガジン社)のライターをやりながら「名古屋格闘技会」を組織したことがあった。
 いわゆる記者時代からの人脈を使って有名な格闘技選手を名古屋に招き、実技指導などのイベントを行うもので「名古屋の格闘技おこし」が目的だった。
 藤原喜明、佐山聡、畑中清詞、佐藤孝也らを招いたイベントの模様はNHKでも紹介されたことがある。
 それに積極的に協力をしてくれたのが長谷川さんだった。
 その長谷川さんが公武堂内に小さなジムを造った。ちょっとした試合がやれるし「公武堂ファイト」という大会も定期的に行っている。
 そればかりか、このほどインターネット無料動画「公武堂TV」(毎週月曜23時─24時)という番組を配信し始めた。
 名古屋の格闘技界を盛り上げるための応援番組であり、さまざまな情報を取材して放送していくものだ。
 第1回放送は8月4日に行われたが、ムエタイを教える「キング・ムエ」「リアル・ムエ」代表の元全日本キック王者佐藤孝也が登場して熱いトークが行われた。
 佐藤は南山大学の学生だった時に全日本王者の立嶋篤史を破った。トークで長谷川さんも言っていたが、佐藤が立嶋に勝ったことで「佐藤に続け」と名古屋の格闘技界は勢いづいたし、佐藤を応援していた「名古屋格闘技会」も盛り上がった。
 私が主宰していた「名古屋格闘技会」は持ち出しが多くて大変だった。活動費を捻出(ねんしゅつ)するために東京での取材を多くしたのが原因で自然消滅したが、それを考えると長谷川さんの活動も大変だろうと察しがつく。
 聞けば名古屋で大会があればあるほどスポンサーとして持ち出しが多くなり、チケットのもぎりを手伝うこともあるらしい。
 「金は大変ですけど体力面は大丈夫なんで」と長谷川さんは笑う。この人も名古屋の人材になったなと思う。
 この連載も今回で最終回となった。「少しでも名古屋の格闘技界のためになれば」と長い間、掲載を続けてくれた名古屋タイムズ紙にあらためてありがとう。(スポーツライター)

(2008年8月7日更新)




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