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五輪後の中国:/3 地下鉄に自動券売機

 ◇普及に硬貨不足が壁

 北京最大の目抜き通り、長安街に沿って走る地下鉄1号線のターミナル「建国門」駅。自動券売機で切符を買い、つり銭の硬貨をポケットに収めようとすると、券売機の脇に立つ制服姿の女性が丁寧な口調で「紙幣と交換してください」と手のひらを差し出してきた。

 北京の市民はこの女性を「硬貨おばさん」と呼ぶ。切符を買い求める乗客から紙幣を受け取っては硬貨を渡したり、自動券売機の中のつり銭用硬貨を絶えず補充する。券売機は硬貨しか使えないからだ。

 北京の地下鉄は、五輪を機に3路線増え8路線になり、ほぼ全駅に自動改札機と自動券売機が整備された。顧客に投げ捨てるように釣り銭を渡す切符販売員の姿が北京のサービスの悪さの象徴だったが、券売機の普及で行列が減って余裕が出たのか、この光景もめっきり減った。ところが、北京では券売機に欠かせない1元(約15円)硬貨の流通が少なく、つり銭不足になった券売機の使用停止が頻発している。

 「自動化を進めた北京市交通局と、通貨の発行を担当する中国人民銀行の調整ができていなかった可能性が大きい」。中国政府の関係者はそう打ち明ける。金融関係者は「日本などでは、スイカなど非接触型ICカードが普及段階に入っている。『キャッシュレス化』の研究を進める人民銀行が、硬貨増発に難色を示したためだ」と分析する。

 自動券売機導入は、省力化のモデル事業。だが、安くて豊富な労働力を抱える中国で普及が進むかは不明な点が多そうだ。【北京・大塚卓也】=つづく

毎日新聞 2008年10月23日 東京朝刊

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