北京五輪終了後、中国は再び、「食の安全」問題に直面した。
9月中旬に有毒物質メラミンで汚染された粉ミルクによる健康被害拡大が発覚、同月23日には、複数の酒類メーカーの製品から発がん性物質が検出されたとの情報が広がり、酒類業者の株価は、大幅下落した。
中国政府は今年1月の毒ギョーザ事件発覚を機に「食の安全」確保に全力を挙げた。五輪期間中、庶民の食卓でもある小規模な露店を北京市内からすべて撤去。選手村の食材は、専用農場から調達し、運搬車両に警備員まで同乗させるなど気を配り続けた。
中国メディアによると、問題の粉ミルクを製造した中国最大手、三鹿集団は7月に多数の乳幼児に腎結石の被害が出たことを把握。地元当局に通報したが、五輪前の問題表面化を恐れた当局が情報を隠ぺいした。
温家宝首相は「問題を覆い隠すことはせず、誠実に対処し、断固として解決する」と強調。情報を隠ぺいしていたとして地元政府のトップを解任したほか、中央政府では担当局長を更迭した。
しかし、その後も家畜用飼料へのメラミン混入や冷凍インゲンへの農薬混入問題が発覚するなど「食の安全」問題沈静化の気配は見えない。北京五輪を機に、中国が「国際標準を意識するようになった」との指摘もあるが、情報をいち早く公表し、国民の健康と命を最優先する発想が芽生えたのか。その評価は定まっていない。【北京・大塚卓也】=つづく
毎日新聞 2008年10月22日 東京朝刊
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