緊急処置の必要な妊婦や赤ちゃんの搬送先をインターネットで検索する全国のシステムのうち、73%について現場の医師が「十分機能していない」と感じていることが、各地の総合周産期母子医療センターなどでつくる「全国周産期医療連絡協議会」の実態調査で25日、分かった。
東京都内の妊婦が8カ所の病院に受け入れを断られ、脳内出血で死亡した問題でもこのシステムが最新情報を反映せず、役立たなかった。医師が診療のかたわら受け入れ先を探す負担を訴える声も多く、同協議会は「都道府県が搬送先をあっせんする制度を整えるべきだ」と提言している。
システムは都道府県単位で整備、運用。調査は昨年9月、協議会に参加する周産期医療施設にメールで依頼し、都道府県ごとに1施設以上から回答を得て、それぞれの地元の現状を分析した。
調査結果によると、空きベッド情報を検索するインターネットシステムがあるのは37自治体。うち27(73%)に関する評価は「十分機能していない」だった。
理由は「情報更新がうまくいかない」(11)が最多。「電話の方が確実」(8)、「ほとんど満床なので意味がない」(3)などが続いた。「必要性が感じられない」(2)もあった。「こうしたシステムは存在しない」は6。ほかに電話やファクスで対応する地域もあった。
受け入れが決まらない場合、半数以上の地域で周産期センターなどの基幹病院がほかの搬送先を探していた。
自由記述では「いつも『収容先が決まらないのでは』という不安と戦いながら、電話をかけまくっている」(茨城)、「空きベッド情報を医師が1日何回も更新するのは困難」(福井)、「業務をしながら受け入れ病院探しは大きな負担」(大阪)、「当直医が受け入れ先探しで1〜2時間拘束される」(福岡)などの意見が目立った。
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【用語解説】東京の妊婦死亡問題
体調不良を訴えた東京都内の妊婦(36)が4日、都立墨東病院など8病院に受け入れを拒否され、最終的に搬送された墨東病院で出産後、脳内出血の手術を受け、3日後に死亡した。赤ちゃんは無事。墨東病院は都指定の「総合周産期母子医療センター」だが、4日の当直は研修医1人だけだった。この当直医は都の検索システムで「受け入れ可能」だった3病院を妊婦のかかりつけ医に紹介したが、3病院はいずれも満床などを理由に断った。
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