早期発見できれば、根治や妊娠が可能な子宮がん。ライフスタイルの変化によって、子宮の下部に腫瘍(しゅよう)ができる子宮頸(けい)がんが増えているという。婦人科悪性腫瘍化学療法研究機構から化学療法の専門病院に認定されている県立医大産科・婦人科の梅咲直彦教授(65)に、原因や治療法などを聞いた。
■若年化
子宮頸がんの好発年齢は従来30~40代であったが、近年は20代でも増加している。頸がんの大きな原因はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染と考えられている。性交渉によって感染することから、初交年齢の若年化、また性行動の活発化が関連していると推測されている。
頸がんの若年化は、妊娠できる体(リプロダクティブヘルス)を守るという面で大きな問題となっている。そのため、厚生労働省は子宮頸がんの検診は20歳から始めることを強く勧めている。
■検診は細胞診
頸がんの検診は細胞診で行われる。結果はクラス1~5に分類され、3以上であれば精密検診が必要となり、生検という細胞を採取する方法で行われる。検査結果は正常、異形性(軽度、中等度、高度)、上皮内がん、浸潤がんと報告される。異形性とは、がんではないが、数年後にがんである可能性が高い病態である。
高度異形性、上皮内がんは治療法として頸部の病変を円すい状に摘除する方法が可能で、この場合、子宮を摘出する必要がなく、リプロダクティブヘルスを守ることができる。浸潤がんの初期(1~2期)では手術を、進行がん(3~4期)では放射線治療が選択される。
■ワクチンに期待
最近、HPV感染を予防するワクチンが開発され、多くの国で接種が開始された。初交前の女児に接種するもので、11~12歳ごろを目安に始める。副作用も、接種部位の軽い疼痛(とうつう)や発疹(ほっしん)以外、報告されていない。このワクチンは子宮頸がんの発症率の低下に大きな貢献を果たすと期待されている。日本ではまだ接種は許可されておらず、数年後の予定である。
多くの女性を悩ませてきた子宮頸がんが、激減する時が間近に迫っている。
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■人物略歴
68年、大阪市立大医学部卒。日本産科婦人科学会理事、同学会県支部長などを歴任。00年から現職。
毎日新聞 2008年10月25日 地方版