麻生太郎首相は首相就任後初の訪中で、中国の胡錦濤国家主席と温家宝首相、韓国の李明博(イミョンバク)大統領と個別に会談し、日中、日韓関係を発展させるとともに、世界的な金融危機などに対応するため連携を強めていくことを確認した。
深刻化する金融・世界経済情勢への対応に加え、北朝鮮問題を含めた安全保障や地球温暖化対策など、北東アジアでも2国間の枠組みを超えた協力が必要な時である。日中韓の首脳は3カ国の協調を国際社会の中で生かす態勢づくりに努めてほしい。
今年、日中間では胡主席が5月と7月に訪日し、8月には福田康夫首相(当時)が訪中した。今回が今年4回目の首脳会談となった。これほどひんぱんな首脳交流は過去にも例がない。
今年は日中平和友好条約締結から30年の節目に当たる。麻生首相が条約締結30周年記念レセプションのあいさつで、「中国くらい日本にとって重要な国はざらにはない」「互いに欠くべからざるパートナーだ」と述べたのも当然といえる。
この間、相互補完関係が急速に深まった。昨年の貿易総額は国交正常化時の200倍を超えて初めて日米間を上回り、中国が日本にとって最大の貿易相手国となった。人の往来も昨年は500万人を超えた。
もちろん、解決が迫られている課題もある。中国製冷凍ギョーザによる中毒事件について胡主席は「きちんと対応する」と約束し、東シナ海のガス田開発問題は共同開発の実施などへ向け事務レベルで協議を進めていくことを温首相との間で確認した。中国側の真剣な対応を求めたい。
麻生首相はレセプションあいさつで「日中両国は『共益』の精神を世界に広げていかなければならない」「私たちは同じ未来を見据えている」とも述べた。意見が異なる問題にも「共益」の精神で臨もうという呼びかけには同感である。「戦略的互恵関係」を発展させることにもつながる。
一方、日韓首脳会談では北朝鮮の核問題での連携や首脳交流の継続を確認したが、新学習指導要領解説書への記述で一時両国関係をぎくしゃくさせる要因となった竹島(韓国名・独島)問題には双方とも触れなかった。「日韓新時代」への協力関係を優先させた両首脳の対応を評価したい。
温首相と李大統領は、麻生首相が提案した日中韓3首脳会談の年内日本開催を支持した。当初は9月に神戸市で開く予定だったのが福田首相の突然の退陣で延期されたいきさつがある。
年内開催は衆院解散・総選挙の時期ともからみデリケートな問題ではある。しかし、国際会議とは独立した形で日中韓3カ国の首脳が定期的に集まり、アジアや国際的な課題について率直に意見交換する場を新設する意義が大きいのは確かである。
毎日新聞 2008年10月25日 0時44分