精神病院を廃止し、地域で患者を支えることを決めたイタリアの180号法(通称バザリア法)施行から30年。提唱したイタリアの精神科医、故フランコ・バザリアを記念し創設された「第1回バザリア学術賞」にフリージャーナリストの大熊一夫さん(71)が選ばれた。大熊さんは、バザリアの業績を調査研究した著作の出版を日本で行い、改革の必要性を広く国内で訴える。
日本の精神科病床は約35万床(04年)と先進国の中でも突出して多い。「WHO(世界保健機関)統計によると、同じ人口当たりの精神科病床数は伊の7倍、英国の3倍もある。精神病院中心主義をやめ、日本で地域で患者を支える仕組みを築くためにも出版の意義は大きい」と、大熊さん。新聞記者時代に、「ルポ・精神病棟」を著して話題を呼んだ。イタリアは単科の精神病院を廃止。州政府の第三セクターや精神保健センターが患者の就職、住居探しまで面倒を見る。「地域で患者の生活を丸ごと支える国があることを知ってほしい」【大和田香織】
毎日新聞 2008年10月11日 東京夕刊