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【主張】医療・介護試算 財源の具体的道筋提示を
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に仲間入りする平成37年(2025年)時点の医療・介護費用に関する財政シミュレーション結果を政府が公表した。
高齢化社会に対応するのに必要な医療・介護サービスの「あるべき姿」を改革の進み具合に応じて3パターン設定し、改革しないケースも含めて、将来の必要額を試算した。政府は5月に基礎年金の「全額税方式」についての試算も行っており、社会保障全体の改革論議につながることを期待したい。
試算によると、3つの改革ケースとも37年の医療と介護に要する費用は90兆円超に達する。これをまかなうには税14兆円、保険料12兆円の追加財源が必要だ。
医療や介護をめぐっては、医師不足や特別養護老人ホームへの入所待ちなどの問題が山積している。高齢化でニーズが膨らむ中、サービスを十分確保できなければ社会不安につながる。優先的に財源を振り向ける必要があろう。政府には、早急に財源確保策の検討に着手するよう求めたい。
伸び続ける社会保障費を支える安定財源としては、消費税が最有力であることは言うまでもあるまい。試算で示された追加財源の税部分を消費税率に換算すると約4%となる。
喫緊の課題となっている基礎年金の国庫負担割合を引き上げるための財源を含め、社会保障全体の財源手当てについての道筋を具体的に示すべきだ。
保険料の大幅アップが避けられないことも忘れてはならない。税も保険料も同じ国民の財布からの支出だ。税と保険料の一体的な検討が必要といえよう。
同時に、試算が示した追加財源規模だけで、本当に質の高い医療・介護サービスが実現できるのかの検証も必要であろう。政府は改革メニューとして、救急や手術などに医療スタッフを手厚く配置することでの入院期間の短縮や、受け皿となる介護体制の拡充などを示したが、これらの実現にもコストはかかる。ところが、その規模や財源は不明確だ。これも多くは国民負担となろう。
麻生首相は、社会保障などの安定財源確保に向けた「中期プログラム」の策定について、消費税増税を含めて検討するよう与党に指示した。次期総選挙では、具体的な見通しと決意を直接国民に問うことが求められる。