日経平均株価は24日、8000円を割り、2003年4月に付けたバブル後の最安値、7607円に迫った。円高の進行による企業業績への懸念が原因だ。円相場はその後、13年ぶりの円高・ドル安水準になった。株安が示しているのは対岸の火事とも見られていた米住宅バブルの崩壊が、日本企業の経営を本格的に巻き込み始めた現実である。
日本の株安には2つの伏線がある。第1に、日本企業が国内の少子化に対応して進めた収益のグローバル化だ。製造業でみると、08年3月期の海外売上高比率は過去最高の45%に達している。こうした収益構造を、米金融危機に端を発する世界景気の減速が襲っている。
対ドル、ユーロでの円高の進行が追い打ちをかけた。まず米金融危機を背景にドル安が進んだ。米国の変調は欧州の金融システムや実体経済に飛び火し、比較的堅調だったユーロも下げ始めた。欧米への輸出に依存する企業にとっては採算が狂い、収益の下振れに直結する。
ソニーは23日、海外での需要減と想定を超える円高を理由に09年3月期の連結営業利益の予想を大幅に下方修正した。売り上げの8割を海外で稼ぐ同社への逆風は象徴的でもある。上場企業全体でも09年3月期は7年ぶりの減益に転じるのはほぼ確実とみられている。
株安のもう1つの伏線は、機関投資家が換金のための株式売却に動いている点だ。特に、投資家から集めた元手に負債を加えて投資し、収益の極大化をねらうヘッジファンドの売りが目立っている。株安を受けた投資家からの解約要請に加え、金融危機に端を発する貸し渋りにより、株を売って借入金を返済する圧力にさらされているためだ。
2つの伏線が示す通り、日本の株式相場は、米国発の危機が世界に広がった構図を映し込んでいる。ただ、日本株には欧米と違うところがある。企業の財務体質が比較的健全である点だ。
自己資本に対する有利子負債の倍率を示す「負債資本倍率」は日本企業の場合、07年度で0.82倍と米企業より健全だ。日本企業は90年代以降、負債を圧縮した結果、信用度が高まって貸し渋りの圧力を受けにくくなった。世界の企業の脅威に浮上し、株安の原因にもなっている信用収縮には強いといえる。
東京証券取引所第1部に上場する企業のPBR(株価純資産倍率)は解散価値とされる1倍を下回る。株価が理論的に説明しにくい水準まで下げていることにも注目したい。