金融危機の嵐が世界を襲うなか、アジアと欧州の首脳が集うアジア欧州会議(ASEM)首脳会合が24日、北京で開幕した。会合では危機克服に向けた協調、国際金融体制の実効的かつ包括的改革の推進などを盛り込んだ特別声明を採択した。
アジアと欧州の関係強化を目的に1996年に始まったASEMは2年ごとに首脳会合を開催している。今回が7回目だ。43カ国と2機関が参加し、国際通貨基金(IMF)に資金支援を要請しているパキスタンも今回から加わった。
声明は具体的な内容に乏しいが、経済規模で世界の半分以上を占めるアジアと欧州が金融危機の現状認識を共有し、危機対応での連携を確認した意義は大きい。11月15日に米国で開く国際的な緊急首脳会合に向けた地ならしにもなった。
北京では麻生太郎首相にとって初めての日中、日韓、日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳会談も相次いだ。フィリピンなどは日本が加わったASEANとの会合をより重視していたようである。
アジア通貨危機の教訓から外貨準備を積み上げてきたアジア諸国は危機の影響が軽いとされるが、米欧投資ファンドの資金引き揚げなどで株価や通貨の大幅な下落に見舞われている。欧州と比べたアジアの地域連携への取り組みは遅れており、地域でトップの経済力を誇る日本の主導力不足への不満も広がっていた。
日中韓とASEANの首脳会合では、危機の際に2国間で外貨を融通しあう「チェンマイ・イニシアチブ」を拡充し、多国間で通貨を融通する体制を早期に整えることで一致した。関係国の不安心理を和らげるためにも具体化を急ぎたい。
日中、日韓の首脳会談でも金融安定化への連携を確認した。日韓関係は竹島(韓国名・独島)の領有権を巡って冷え込んでいたが、首脳会談で竹島問題は議題にならなかったという。危機対応での協調がなにより重要だという認識の表れだろう。
金融危機は地域の経済連携を強める好機でもある。金融危機への対応策を整備するのは当然だが、保護主義を排して自由貿易体制を広めることも大切だ。中韓との連携を軸に日本が主導力を発揮すべき時である。