政府が30日に決定する追加経済対策の与党案がまとまった。24日の東京株式市場で日経平均株価が5年5カ月ぶりに8000円を割り込んだように、景気の先行きに対する不安感が一段と高まっている。
そうした中での対策ということで、生活者対策、金融・市場対策を多く盛り込んだのが特徴だ。事業規模は20兆円に膨らみ、財政支出は5兆円程度を見込んでいる。
これに加え、麻生太郎首相は、住宅ローン減税の拡大や09年度に一般財源化される道路特定財源から1兆円規模で地方に配分することを指示した。緊急対策の規模はさらに拡大するということだ。
生活者対策の中には、介護報酬引き上げなど、前向きな政策もある。ただ、規模が拡大した分、大盤振る舞いの色彩が一層強まった。2兆円規模の定額減税に加え、高速道路通行料金の追加大幅引き下げや雇用保険料引き下げ、過去最大規模の住宅ローン減税など、財政に負担のかかる施策が並んでいる。赤字国債の増発は避けられない。
そこで、注目したいのは、麻生首相が基礎年金の国庫負担割合引き上げなどの財源措置として、消費税を含む税の抜本改革の道筋を示す中期プログラム取りまとめも指示したことだ。経済状況が回復した段階で、国民に負担を仰ぐということだ。財政再建の観点から首相の発言を言いっ放しに終わらせてはならない。
というのも、追加対策のための第2次補正予算、09年度当初予算を通して、財政状況の悪化は大幅に進むからだ。定額減税の財源には財政投融資特別会計の金利変動準備金を法改正して充当するが、この資金は本来、国債整理基金特別会計に移され、国債の償還や消却に使われるものだ。その分、国債整理基金特会への繰り入れは削減される。
住宅ローン減税の拡大も税収減要因になる。道路特定財源の1兆円規模での地方への配分も、国、地方の財政バランスを勘案した上で、はじき出したのか疑問が残る。国が一般会計で使うことのできる金額が減ることは間違いない。
このほかにも問題含みの施策は少なくない。地方対策として盛り込まれた高速道路通行料金の大幅引き下げは、原油価格が1バレル=60ドル台まで低下している状況下では、再検討が必要だ。
金融・資本市場対策として盛り込まれている証券優遇税制の延長も株価対策としての効果には疑問がある。資産家優遇の継続といわざるを得ない。住宅ローン減税の拡充も、不公平を拡大するだけである。ともに抜本税制改革で、わかりやすく、公平な制度に組み替えるべきものだ。
これまでにも、景気対策の名の下に、将来に禍根を残す政策が数多くやられてきた。また、その失敗を繰り返すのか。
毎日新聞 2008年10月25日 東京朝刊