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社説

医療・介護費 あるべき姿 どう考える(10月25日)

 高齢化がピークに達する二〇二五年に、あるべき医療と介護のサービスを実現したとすると、どのくらいの費用が必要か−。

 政府の社会保障国民会議が、その試算結果を公表した。

 今の四十一兆円から九十兆円以上にまで膨らみ、追加財源として公費分だけでも十四兆円が必要との計算だ。

 この数字だけを見ると国民の理解は到底得られまい。国民会議も「さまざまな立場から議論が行われ、検証されていくことが望ましい」としている。

 将来の医療や介護の在り方を考える際のたたき台と位置づけるべきだろう。

 試算は、「緩やかな改革」「大胆な改革」「さらに進んだ改革」の三つのケースを想定、それぞれの利用者や施設、職員の数、そのための費用を推計した。

 いずれのケースも前提にしているのが、救急、手術などの急性期に医師や看護師を集中的に投入、入院期間を短縮させることだ。介護でもグループホームなど居住系サービスに力点を置いた。

 たとえば、欧州並みの「大胆な改革」を行った場合、一般病床の職員を現状の倍増にして手厚い医療を行い、急性期の平均入院期間を、現状の半減に当たる十日にする。

 介護の居住系サービスは現状の二十五万人分から六十八万人分にまで増やす。

 わが国の医療は、急性期とその後の回復期などとの機能がはっきり分かれていない。その結果、他の先進国と比べて病床数が多くなるなど、効率化が進んでいない。

 介護でも、住み慣れた地域の中で生活したいという利用者の希望は、十分にかなえられていない。

 そうしたことを考えると、改革の方向は間違ってはいないだろう。

 ただ、これらの推計は、あくまでも「割り切った大きな仮定に基づくもの」(国民会議事務局)だ。

 実際には、介護職員の不足解消策や、医師の業務を看護師らに分担するための規制緩和など、いくつもの難問が横たわる。

 先進国の中では医療費が低く、一定の医療を受けられる今の制度に満足している国民も多いはずだ。

 もちろん、医療や介護の充実には費用がかかる。だが今、一つ一つの推計に対して、細かく評価するのは早計だろう。

 理想の医療と介護はどうあるべきか。そのための費用をどう賄うべきか。今回の公表を、みんなが考える機会にしたい。

 推計結果が消費税増税の名目にされるならば、本末転倒だ。

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