脳出血をおこした東京都内の妊婦が八つの病院に受け入れを断られ、その後死亡した問題で、最初に受け入れを断った都立墨東病院(墨田区)だけが、都内9カ所ある総合周産期母子医療センターのうち、最低2人とされている当直態勢を確保できていなかったことが分かった。7月以降、当直が1人の土、日曜日、祝日の急患受け入れは原則断ってきており、「センターの機能を果たせていない」との声が出ていた。
総合周産期母子医療センターとは、危険性が高い出産や母胎管理のための地域の砦(とりで)的存在の医療機関。都の指定基準によると、24時間体制で産科を担当する「複数の医師」が勤務していることが望ましい、とされている。
都によると、墨東病院では6月に産科の非常勤医が辞めた後は2人での当直が維持できなくなり、7月以降は土、日曜日と祝日に限って1人で当直を担当していた。
このため、土、日、祝日の妊婦の急患受け入れは原則断り、平日でも2人の当直医のうち上席の医師が外部からの非常勤医の場合は「ハイリスク分娩(ぶんべん)の受け入れが困難なことがある」と地元の墨田区・江東区・江戸川区の産婦人科医会会員に伝えていた。
地元の医師たちは「医師不足のなかで、墨東病院も頑張っていた」としながらも、最近の状況については「センターとして機能しないのは異常」との声が出ていた。
しかし、墨東以外の8病院に朝日新聞が取材した結果、全病院で2人以上の医師を当直に配置。最大4人の当直を置く病院もあった。
都立病院の医師不足について、都病院経営本部は24日に開かれた都議会委員会で「都立病院は給与水準も低く、敬遠される傾向にあった」と説明。都によると、05年度の都立病院医師の平均給与は、47都道府県と14政令指定市の公立病院のなかで最下位だった。今年度から産科医については年収で200万〜300万円上積みしたが、それでも中位程度とみられるという。