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新販売方式から一年、日本のケータイ市場は何が変わった?
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昨年、総務省から発表された「モバイルビジネス活性化プラン」を受け、NTTドコモとauが新販売方式をスタートさせ、約一年が経過した。販売方式の変更というユーザーに直接、関わる部分の変化によって、日本のケータイ市場は何が変わってきたのだろうか。10月23日に開催された「モバイルビジネス活性化プラン評価会議」で傍聴した内容なども踏まえながら、日本のケータイ市場の現状と今後について、考えてみよう。
■ ケータイが高い!
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ドコモのバリューコースを従来型販売と比べた図(写真は昨年12月、ドコモの報道陣向け説明会で披露されたもの)
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昨年、日本のケータイ市場を大きく左右する動きとして、各方面で話題を集めた総務省のモバイルビジネス研究会。「移動通信市場におけるユビキタスネットワーク化の進展を踏まえ、新たなモバイルビジネスの成長を通じた経済活性化や利用者利益の向上を図る観点から検討を行う」(報道資料より抜粋、原文まま)という目標を掲げ、2006年末から2007年9月まで、10回の会議が重ねられた。そして、2007年9月には最終報告書をもとに作成された「モバイルビジネス活性化プラン」が公表され、それを受ける形で、NTTドコモとauは販売奨励金と端末価格を明確に分けた「新販売方式」を昨年10〜11月にかけて、スタートさせている。あれから一年。日本のケータイ市場はどう変わったのだろうか。
まず、この一年でよく耳にするようになったのは「ケータイが高くなった」という声だ。これは言うまでもなく、新販売方式の開始により、販売奨励金が大幅に減額され、店頭価格が高くなったためだ。NTTドコモを例に取ると、従来方式で販売されていたときは、最新機種で3万円強、半年から1年ほど経った型落ちモデルであれば、1〜2万円で購入できたのに対し、新販売方式のバリューコースでは905i/906iシリーズが5〜6万円程度、705i/706iシリーズが3〜4万円程度となっているため、2万円以上は高くなったように見えてしまうわけだ。
その一方で、NTTドコモもソフトバンクの新スーパーボーナスに続き、端末代金の割賦販売を始めたため、ユーザーは一時的な負担を抑えることができている。NTTドコモによれば、バリューコースを選択したユーザーの内、一括払いと12回払いが1/4ずつ、24回払いを半数近くの人が利用しているという。
バリューコースを選択した場合、端末代金は従来方式よりも高くなるが、月々の基本使用料が割安なバリューコース用の料金プランを選択できる。従来の料金プランに比べ、月々1680円が割り引かれるわけだが、このメリットに気づいているユーザーは、本誌を愛読してくれているような比較的リテラシーの高いユーザーやきちんと情報収集をするユーザーが中心のようで、販売店などで聞いてみると、店頭で機種変更の相談を受け、説明するまで、新販売方式やバリューコース/ベーシックコースのことを知らなかったユーザーがかなり多いという。こうした月々の支払い面でのメリットがあるにも関わらず、やはり、端末そのものについては「高い」「高くなった」という声が多く、結果的に機種変更などを控えるユーザーも多いそうだ。
さらに、ユーザーからの反応という面では、「従来以上に契約や料金体系が複雑になって、わかりくくなった」という声も聞かれる。これは当たり前のことだが、分離プランと従来方式に近い販売方式を提供するため、NTTドコモではバリューコースとベーシックコース、auではフルサポートコースとシンプルコースという2つのコースを用意しなければならず、結果的に料金プランの数も倍になってしまったからだ。しかも端末代金の割賦販売を利用すれば、月々の支払額が変わってくるうえ、auは利用額に応じて、ポイントで還元するというしくみを採用したため、どのコースがトクで、自分にどのプランが合うのかが一段とわかりにくくなってしまったわけだ。モバイルビジネス研究会では当時の料金体系のわかりにくさ、販売奨励金の回収分が含まれた基本使用料の不明瞭さが好ましくないと言われたが、それを受けた新販売方式の導入が、契約や料金体系を一段と難しくしてしまったとも言えるわけだ。
■ 売れ筋が変わった?
NTTドコモは昨年11月に発表した905i/705iシリーズ以降のモデルについて、新販売方式を適用している。905iシリーズは発表直後の11月下旬から販売が開始され、705iシリーズは早いモデルが今年の1月はじめに発売されている。
NTTドコモはこれまで高機能モデルの90Xiシリーズと個性派モデルの70Xiシリーズを展開し、幅広いユーザーのニーズに応えてきた。しかし、過去の記事などでも紹介したように、905i/705iシリーズ以降、ユーザーの端末の選び方に変化が見られている。スペックや機能、対応サービスを重視していたユーザーが905iシリーズ(今夏以降なら、906iシリーズ)を選んでいることは変わりないのだが、その他のユーザーも905iシリーズを選ぶケースが多くなり、705iシリーズは予想を大きく下回る売れ行きしか記録できなかったという。この傾向は906i/706iシリーズでも継続しており、一部報道で伝えられている次期モデルでのラインアップの見直しにつながっている。
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昨年12月より発売された「905i」シリーズ
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こうした売れ筋の変化も新販売方式の影響によるところが大きい。NTTドコモの場合、バリューコースを選ぶと、端末価格が高くなるが、前述のように、端末代金の分割払いが利用できる。NTTドコモは1回線に付き、最大2台分まで割賦販売が利用できるため、割賦販売を利用することで、特に機種変更の期間が制限されるわけではないが、24回払いを利用した場合、約2年間は支払いが継続するうえ(回線の解約はできる)、短期間の機種変更ではバリューコースの割安なメリットが活かせないため、できるだけ長い期間、同じ機種を使い続けようと考える。しかも分割払いでは、905i/906iシリーズと705i/706iシリーズの月々の支払額の差が500〜600円前後しかない。となれば、ユーザーは自ずと対応サービスや機能が豊富な905i/906iシリーズを選ぶわけで、結果的に705i/706iシリーズの売れ行き不振につながっている。
また、905i/906iシリーズの中でもかなり偏りが生まれている。本誌では「NTTドコモ端末売れ筋ランキング」を毎週、掲載しているが、従来のシリーズ以上に、特定のモデルに売れ筋が偏る傾向が見えている。たとえば、905iシリーズで言えば、P905iが好調な売れ行きを記録し続けたのに対し、SO905iやF905i、D905iはランクインすることが少なかった。販売店などで聞いても同様の傾向があるという答えが返ってきた。906iシリーズでもパナソニックの好調が続いており、これにN906iμやSH906iが続いているという。
■ 新たな不公平感
新販売方式の導入により、端末の販売価格や売れ筋の変化など、さまざまな影響が生まれてきたのだが、売れ筋という点については、販売の現場において、もうひとつ面倒な問題が出てきている。それは「売れ筋ではない商品」、つまり「あまり売れなかった商品」をどう扱うかという問題だ。
前述のように、NTTドコモについてはシリーズで言えば、905i/906iシリーズ、個別のモデルで言えば、P905iやP906i、SH906i、N906iμなどが好調に売れたわけだが、それ以外のモデルについては、他製品に比べ、販売で遅れを取ることになってしまった。従来であれば、次期モデルが登場することで、従来モデルや売れなかったモデルを値下げして、売り切ることができたわけだが、新販売方式では販売奨励金を大幅にカットし、月々の基本使用料を下げているため、そういった対応をすることはできない。たとえば、従来方式に当てはめると、905iシリーズは今年6月の906iシリーズ発売を前に、少しずつ価格を下げていくはずなのだが、昨年11月の発売以来、5万円程度の価格を維持し続けていた。
しかし、新販売方式の影響で売れ筋が偏ったため、当然、モデルによっては在庫がかさんでしまう。この在庫をどうコントロールするのかが注目されていたのだが、NTTドコモは今年6月に入り、在庫が多い旧機種について、店頭価格を少しずつ下げ始め、今月にはついにバリューコースながら1万円前後で一部の905iシリーズを販売することに踏み切っている。
在庫がかさんでくれば、最後は在庫処分(あまりこういう言い方はしたくないが……)という形で、商品を安価に販売するしかない。一般の製品なら、ごく当たり前のことなのだが、月々の基本使用料という支払いが絡む契約サービスであるケータイにおいて、同様のことをやってしまうのは、果たして本当に正しいのかどうかがかなり疑問に感じられた。なぜなら、本来、バリューコースは販売奨励金を大幅にカットし、端末価格が高くなる代わりに、月々の基本使用料を下げているものだからだ。この在庫処分の時期に購入したユーザーは、販売奨励金の恩恵によって、端末を安価に購入でき、しかも月々の基本使用料は割安なバリューコースを契約できたことになる。昨年のモバイルビジネス研究会では、機種変更をする頻度がユーザーによって違うため、不公平感が出てしまうことが問題だと指摘していたが、それを解決するために始めた新販売方式で、新たに不公平感を生んでしまったという皮肉な結果になったわけだ。もちろん、それは端末在庫を抱え込んだ事業者に責任があるわけだが……。
ソフトバンクが「ホワイトプラン」をはじめたことも大きく影響しているが、「モバイルビジネス活性化プラン」によって分離プランが提唱され、3キャリアに月額980円で利用できるプランが登場したことは、ユーザーにとってメリットの1つだろう。加えて家族間などの通話無料も実現した。ただし、ドコモやauの場合、“980円プラン”は2年契約の割引サービスを契約しなければならない。期間を拘束する形の契約が増えたことによって、せっかくMNP(携帯電話番号ポータビリティ)が開始されたにも関わらず、キャリアを乗り換えにくくなっている印象はある。
■ 販売状況の急激な変化に苦しむメーカー各社
新販売方式の影響をもっとも強く受けているのは、やはり、端末メーカーだろう。すでに、今年に入り、NTTドコモの端末ラインアップの一角を支えてきた三菱電機が撤退し、auをはじめ、NTTドコモや旧ボーダフォン及びJ-フォン(現ソフトバンク)にも端末を供給したことがある三洋電機も携帯電話事業を京セラに売却した。これに加え、ソニー・エリクソンも国内向け事業の見直しをしているのではないかと何度も報道され(同社は否定)、他メーカーについても事業計画の見直しや撤退、譲渡、売却などがあるのではないかと噂されている。
また、ここに来て、各メーカーの四半期決算やJEITAの発表などを見ると、前年比で20%を超える落ち込みを記録したという発表もあり、端末メーカーはかなり厳しい状況を迎えたことがうかがえる。しかも販売奨励金を大幅にカットした新販売方式はまだ始まったばかりで、NTTドコモの例を見てもまだ約1/4程度のユーザーしか新販売方式の契約に切り替えていない。つまり、今後、新販売方式の契約に切り替えたユーザーは増え続けるわけで、今まで以上に買い換えサイクルが伸び、端末の出荷台数が減ってくることも考えられる。端末の出荷台数が落ちてくれば、自ずと端末で利用するコンテンツサービスなども新しい需要を喚起しにくくなるため、今後はコンテンツプロバイダへの影響も拡大してくることになるかもしれない。
■ モバイルビジネス活性化プラン評価会議の姿勢
こうした業界の変化に対し、今回のモバイルビジネス活性化プラン評価会議ではシャープとNTTドコモが招かれ、現状を報告するためのプレゼンテーションと質疑応答が行なわれた。詳しい内容は本誌記事を参照いただきたいが、個人的には構成員からの質問や議論の方向性には、昨年のモバイルビジネス研究会のときと同様の違和感を覚えた。
まず、今回は国内メーカーで最大のシェアを持ち、今年、中国への展開も開始したシャープが招かれたため、海外展開に対する質問が浴びせられた。これは昨年も議論されたことなのだが、モバイルビジネス研究会から続く総務省の意向として、ICT(Information and Communication Technology)の国際競争力の強化が掲げられており、「国内メーカーが国内の閉じた市場だけを相手にしているから、海外市場で戦えない」という論理をもとに、「海外に進出しないメーカーはどうかしている」とでも言わんばかりの批判が聞かれる。
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モバイルビジネス活性化プランの概要。「販売モデルの見直し」「MVNO新規参入の促進」「モバイルビジネス活性化に向けた市場環境整備の推進」という3点が柱となっている
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しかし、メーカーは通信サービスを支える企業である一方、携帯電話事業者のように免許や許認可を受けたり、間接的に国の資本が入った企業ではなく、株主が出資した私企業に過ぎない。その私企業に対し、「海外に進出しろ」といった事業の方向性を強く促すのは、果たして、国の姿勢として、正しいのかどうかは非常に疑問が残る。
あえて極端な比喩を挙げるが、たとえば、野球選手でもサッカー選手でもゴルファーでも日本国内で戦うか、海外に挑戦するかは、その選手本人が決めることだ。才能は多くの人が認めているが、本人の意向により、国内のみでプレーするという選手もいるだろう。なかには海外で積んだ経験を活かし、国内で活躍するという例もある。企業と個人では当然、位置付けが違うわけで、同じように比較するべきではないのだろうが、昨年のモバイルビジネス研究会、今年のモバイルビジネス活性化プラン評価会議を傍聴したり、議事要旨を読んだりしていると、どうも「世界でシェアを獲得しているメーカーが素晴らしく、技術的にも優れている」とばかりに、海外メーカー礼賛のような雰囲気が強く感じられるのだ。
今回の会議でも少し近い話題が出ていたが、たとえばノキアが世界最大のシェアを獲得できた背景には、ちゃんとした理由がある。もちろん、端末や基地局など技術面で優れていることもあるが、ある程度ケータイに詳しい人ならご存知の通り、ノキアはGSM方式に関する特許を数多く持っており、GSM方式の端末を安価に製造できるというアドバンテージがある。これに加え、政府が税制など、さまざまな形で同社を優遇し、世界に事業を展開しやすい環境を整えることで、成長を遂げてきた。シェアの獲得についてもすでにある程度、ケータイが普及しているヨーロッパなどの地域だけでなく、アフリカなどの発展途上国向けに安価でシンプルな端末を販売することで、高いシェアを獲得できている。ちょっと言い方は悪いが、モバイルインターネットの活用が発展していない国に対し、枯れた技術を使った安価な端末を数多く販売することで、しっかりと販売台数を稼ぎ、大きなシェアを獲得している側面もあると言えるわけだ。
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カシオが北米向けに供給している「G'zOne BOULDER」
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これに対し、日本のメーカーは付加価値の高い商品を作ることに長けており、ケータイについてはそれを海外に展開したものの、受け入れられず、パナソニックやNECなども撤退を余儀なくされている。ちなみに、よく似た構図は過去にAV機器などでも見受けられている。たとえば、VHS方式のビデオデッキは言うまでもなく、日本発の技術(日本企業参画の技術方式)が世界中で普及し、価格競争が激しくなったときに韓国や中国などのメーカーが安価な製品を生産し、発展途上国などに販売することで、日本企業を上回るシェアを獲得している。同様のことはDVDプレーヤーなどでもくり返されている。
また、総務省はモバイルビジネス活性化プラン評価会議の開催に際し、「モバイルビジネス活性化プランの進捗状況」という資料を毎回、更新し、配布している。この中に「携帯電話メーカーの海外進出動向に関する報道」という項目があり、シャープ、松下電器産業(現在の社名はパナソニックであり、携帯電話メーカーとしてはパナソニック モバイルコミュニケーションズ)、富士通、京セラについての報道が触れられているのだが、富士通については今月初めにも本誌で報じられたように、3G世代での海外進出は否定しており、過去の海外進出についても「米国では昔、自動車電話を少し展開しただけで、数字にもならない程の規模。携帯電話で海外に進出したことはない」と否定している。また、最近の話題で言えば、カシオ日立モバイルコミュニケーションズは米ベライゾン向けに「G'zOne」を供給しているのだが、それらの話題は資料で触れられていない。国内メーカーの海外進出について、議論をするのであれば、やはり、こうした部分についてもきちんと正しい情報を把握し、資料に反映する必要があるのではないだろうか。重箱の隅をつつくような話だが、こうした不十分な情報分析を見ると、どうも総務省と会議の姿勢には疑問を感じざるを得ない。
もし、本当に国として、ICTの国際競争力の強化を目指し、国内メーカーの海外進出を促したいのであれば、どうすれば国内メーカーが海外に出て行きやすく、事業を展開しやすくなるのかを議論すべきではないのだろうか。ところが、会議の内容を見ていると、どうも国内メーカーの事業展開にダメ出しをするばかりで、建設的な意見が出てこないように受け取れてしまう。国内メーカーと海外メーカーでは生い立ちも違えば、置かれている環境も違う。そのことをきちんと理解したうえでなければ、このまま、議論を進めても良い結果は得られないような気がするのだが……。
■ 誰のための「活性化プラン」なのか
日本のケータイ市場を大きく変えることになったモバイルビジネス活性化プラン。今回の評価会議では、同会議構成員で野村総合研究所の北俊一氏も『官製不況か?構造改革に伴う痛みか?』と題したプレゼンテーションを行い、現在の国内市場に対する分析やモバイルビジネス活性化プランの方向性などについて、いくつかの意見が提示された。
その冒頭、北氏は「一部ではモバイルビジネス“不活性化プラン”ではないかと言われているが〜」と前置きし、参加者や傍聴者の笑いを誘ったが、少なくとも現状を見る限り、日本のケータイ市場は『不活性化』とも言える状況へ向かいつつある。「構造改革に伴う痛みだ」という意見に理解できる部分もあるが、痛みを伴っているのが事業者だけでなく、業界を支えるメーカーであったり、恩恵を受けるはずだったユーザーにも及んでいるのは、やはり、気になる点だろう。もし、今以上に市場環境が厳しくなり、日本市場に端末を供給するメーカーが減り、ユーザーの選択肢が減ってしまったら、ユーザーにとっても不幸なことだ。そんなことになったら、何のための、誰のための「活性化プラン」だったのかがわからなくなってしまう。
「海外メーカーがあるから大丈夫」という意見があるかもしれないが、スマートフォンのような端末なら、今後も拡大する可能性があるものの、ごく一般的なユーザーが利用する音声端末については、今までの経緯を考えても国内メーカーに代わり、海外メーカーが市場を支えていくのは、かなり難しいように見える。もちろん、海外メーカーにも積極的に日本市場に参入し、活性化して欲しいのだが……。
また、北氏はプレゼンテーションの中で、「国内市場では年間4500万台前後の出荷が続いてきたが、そもそもこれが正常なレベルなのか?」「次々と新しい端末を開発し、ユーザーに不必要な買い換えを促していたのではないか?」と疑問を投げかけた。この点については各事業者をはじめ、メーカーも業界関連各社も今一度、よく考え直さなければならないことかもしれない。
iモードやカメラ付きケータイの登場など、近年のケータイの進化を間近で見てきた筆者としては、決してムダな機能が開発され、搭載されてきたとは考えていない。カメラ付きケータイは世界に普及したし、欧州市場ではまったく成功していないケータイテレビが日本ではワンセグとして広く普及し、GPSを利用した位置情報サービスやおサイフケータイも新しい市場を生み出すことに成功している。
しかし、その一方で各事業者やメーカーは新しいサービスや機能、技術を生み出し、市場を拡大することに注力するあまり、一部のユーザーを置き去りにしてしまった感はなかっただろうか。「幅広いユーザーのニーズに応える」を合い言葉に、大量の新モデルを一気に並べ、「さあ、どれかひとつは気に入るでしょう」とばかりに売り出す姿勢が本当に好ましいことなのかどうかは、もう一度、考えるべき時期に来ているのかもしれない。ケータイは回線や端末を「売る」ことだけが目的なのではなく、「使ってもらう」ことが大事なはずだ。使ってもらうためにはもっとケータイを知ってもらう必要があり、その部分が欠けていたからこそ、現在のような状況に陥ってしまったのかもしれない。
さて、そろそろ今年も秋冬商戦のシーズンを迎えようとしている。本稿でも触れたように、新販売方式の導入により、これからの端末選びは少し慎重になることだろう。しかし、そんな躊躇も吹き飛ばしてしまうようなワクワクする端末が各社から発表されることを期待したい。
■ URL
モバイルビジネス活性化プラン評価会議
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa/mobi-rev/
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・ Act.16「美しき“モバイルビジネス”?」
(法林岳之)
2008/10/24 14:03
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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