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【徹底検証】たらい回しで妊婦死亡 “最後の砦”に問題点山積 (3/4ページ)
●困難な診断
妊婦が当初、駆け込んだかかりつけ医は22日に開いた会見で、「尋常ではない頭痛を訴えていた」と話し、受け入れ要請先である墨東病院に緊急性を訴えたと力説した。しかし、墨東病院は「脳内出血の認識はなかった」と食い違った説明をしている。
もし、墨東病院側がかかりつけ医の要請を漫然と受け止めていたなら、過失にも問われかねないが、専門家からは、急病の妊婦の場合、外見の症状だけで「脳の血管に障害がある」と判断を下す難しさを指摘する声が強い。
昭和大の岡井崇教授(産婦人科)は「頭痛や吐き気があるといった症状があれば妊婦特有の子癇(しかん)発作を疑ったりする。その後、ベテランなら脳内出血という判断にたどり着くかもしれないが、経験のない医師だと判断は難しいだろう」。対応した墨東病院の医師は、まだ現場経験5年目だった。
妊婦の脳内出血を、「100万人の妊婦で、数例ある程度の珍しい症状」という医師もいる。
日本医科大学の中井章人教授(女性診療科・産科)は「今回のようなケースで、産科医だけの判断で妊婦の症状を判断するのは難しい」と強調。脳外科の専門医に診せ、CT(コンピューター断層撮影)などで診断をしないと脳の血管に障害があるかどうかはわからないと指摘する。
●複数の診療科目
今回のケースで妊婦は妊娠9カ月。脳内出血で入院する場合に、病院側はどういう体勢を取るか。墨東病院のスタッフは「万全の体勢を作るのであれば産科医、小児科医、脳神経外科医、それに麻酔科医が必要ということになる」という。医師1人と看護師、手術設備がそろっていたからといって、即受け入れ可能というわけにはいかないのが現実だ。
東大病院は、脳外科医などの体制面では受け入れ可能だが、新生児の集中治療室(NICU)が満室という、産科の体制が整わないことが理由となって、受け入れを断った。