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【徹底検証】たらい回しで妊婦死亡 “最後の砦”に問題点山積 (1/4ページ)
多くの病院が集まる東京で起きた脳内出血を起こした妊婦(36)の救急搬送をめぐる悲劇。妊婦を取り巻く医療環境を検証すると、都会の母子を救うための「最後のとりで」にはさまざまな問題が浮かび上がる。舛添要一厚生労働相は24日、都立墨東病院に出向き、大臣自らが聞き取りする異例の調査を行った。厚労省は全国に74カ所ある総合周産期母子医療センターも現状を調査し、改善を検討する考えだ。
●医師不足
「一番の問題は医師不足」。舛添厚労相は24日、都立墨東病院での異例の視察を終え、そう語った。
医師不足の中でも、とりわけ産科医や救急医の不足は顕著だ。産科医はこの10年間で1割の減。勤務時間が不規則で、事故の際の訴訟リスクが高いことが原因と言われている。
墨東病院規模の病院で、望ましいとされている常勤産科医の定数は9人だが、同病院では、5年前から産科医が定数の9人を満たしていなかったという。都が同日、都議会で明らかにした。現在は4人。研修医も含めて2人で回していた当直は、土日に限って7月から1人にし、原則的に救急搬送も遠慮していた。妊婦が脳内出血を起こした今月4日は土曜日だった。
行政も手をこまねいているだけではない。基幹病院には重点的な産科医の配置を始めた。高度医療を提供する「総合周産期母子医療センター」の指定病院も拡充中。救急現場と医療現場のパイプ役となる「専門コーディネーター」制度を作ったり、関係機関がインターネットの画面を見るだけで「空床の有無」「手術受け入れの可否」が分かる周産期医療情報を共有するシステムも整備してきた。
しかし、今回、それらが機能した形跡はない。舛添厚労相は「周産期医療問題の解決に力を入れてきたのに、このようなことが起きたのは羊頭狗肉(見かけ倒し)だ。非常にショック、重く受け止める」と話した。