掲載日: 2006年 12月 27日
ウォシュレット開発ストーリー【前編】
お話を伺ったTOTOウォシュレットテクノ商品本部長 井上修治さん |
「トイレなんて品位が落ちる」広告掲載拒否にショック
さかのぼること、昭和45年(1970年)。当時、高度成長期にあった日本は、空前の住宅建設ラッシュにありました。住宅に納める水回り製品のトップメーカーとして、水洗便器の売上げもうなぎ昇りでした。さらに会社のイメージアップを図るため、最新トイレをデザインした広告を作り、雑誌や新聞に掲載を依頼しました。ところが・・・・・・。雑誌社は、『便器は、汚い尻をイメージさせる。雑誌の品位が落ちる』、新聞社は、『トイレは、“ご不浄”』と広告掲載を拒否されたのです。
社運をかけた便座開発のはずが・・・
その後、二度のオイルショックによって、住宅着工戸数が激減。それに伴って、トイレの販売個数も落ち込みました。さらに水周り品の販売も伸び悩んでいたところに、「会社を救うために、これを開発しろ」と見せられたのが、“ウォッシュ・エア・シート”でした。1964年、アメリカのベンチャー企業、アメリカン・ビデ社が痔の患者さん用に開発した医療用便座“ウォッシュ・エア・シート”の輸入販売をTOTOが決めました。1967年アメリカン・ビデ社から特許を取得し、国産ウォッシュ・エア・シートの生産・販売を開始したのは良いのですが、この商品、水の温度が不安定で、熱すぎたり冷たすぎたり、さらに水が発射される方向も不安定な欠陥商品だったのです。
なんと、かの遠藤周作に『ものすごく熱いお湯 〜中略〜 一度しか使わないこんなもの』と書かれてしまったほど。
そこで、日本独自の温水洗浄便座を開発することになったのです。
便器に取り付けられた線に、自分の肛門の位置を示す付箋を貼り付ける |
あなたの肛門の位置は、どこ?
開発にあたって、まずぶつかった問題は、お湯をあてる位置。すなわち、肛門の位置はどこか?ということでした。そんなデータが存在するはずもなく、社内で協力を求めるしかありませんでした。開発スタッフは、社員に針金をはった便座に座ってもらい、座ったときに肛門がきた位置に印をつけてもらうようお願いしました。
特に女性社員は、「恥ずかしい」と嫌がっていましたが、開発スタッフの真剣な姿に心を打たれ、最終的には、男女あわせて300人以上分のデータが集まっていました。
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