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10 月 23 日 (木)  
10/23(木)20:00更新
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妊婦死亡 厚労省が聞き取り調査へ
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脳内出血を起こした妊娠中の女性が東京都内の8つの病院から受け入れを断られたあと死亡した問題で、厚生労働省は24日から、受け入れを断った病院に職員を派遣し、聞き取り調査を行うことになりました。
この問題は、東京に住む36歳の妊娠中の女性が、今月4日に脳内出血を起こし、都内の8つの病院から次々と受け入れを断られたあと、3日後に死亡したものです。
受け入れを断った病院の中には▽高度な治療ができる大学病院や▽リスクの高い妊婦を受け入れる総合周産期母子医療センターなど、「最後のとりで」ともいわれる医療機関も含まれていました。
事態を重くみた厚生労働省は、24日から受け入れを断った8つの病院に職員を派遣し、東京都の担当者とともに直接、聞き取り調査を行うことを決めました。
これまでのNHKの取材に対し、受け入れを断った病院は、▽新生児の集中治療室に空きがなかったり、▽当直の医師が別の患者の対応中だったりして受け入れることができなかったと答えています。
厚生労働省は当時の診療態勢やベッドの空き状況、それにほかの診療科との連携などについて詳しく聞き取り、問題が起きた原因を調べることにしています。
これに関連して、厚生労働省の江利川事務次官は、記者会見で「たいへん痛ましい残念な事案だ。厚生労働省としても、東京都と早急に打ち合わせをし、できればあすにでもいっしょに病院への調査に入りたい。女性が死亡した経緯や原因について、それぞれの病院がどういう情報を基にどう判断したのか、きちんと調べたい」と述べました。
病院の7割 妊婦受け入れ断る
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脳内出血を起こした妊娠中の女性が東京都内の8つの病院から受け入れを断られたあと死亡した問題で、NHKが全国の「総合周産期母子医療センター」を調べたところ、およそ70%にあたる48施設で受け入れを断った経験のあることがわかりました。
この問題は、東京に住む36歳の妊娠中の女性が今月4日、脳内出血を起こし、都内の8つの病院から次々と受け入れを断られたあと、3日後に死亡したものです。
受け入れを断った病院の中には、お産前後の周産期にリスクの高い医療に対応する「総合周産期母子医療センター」が3施設含まれていました。
このためNHKは、全国に74ある「総合周産期母子医療センター」を対象に患者の受け入れ態勢を調査し、70施設から回答が寄せられました。
それによりますと、「妊娠中の女性の搬送を断ったことがある」と答えた病院は、およそ70%にあたる48施設に上りました。
その理由について、ほとんどの病院が、医師不足で対応できなかった、あるいはベッドがいっぱいで受け入れられなかったなどと答えています。
また、妊娠中の女性が脳卒中や心臓病などほかの病気を発症した場合、受け入れが可能かどうか尋ねたところ、19%にあたる13施設が「脳神経外科や循環器内科など専門の診療科がないため、受け入れることができない」と答えています。
日本の周産期医療は、これまで未熟児を救うことが中心で、母親の病気には十分対応できていないと指摘されていますが、今回の調査はこれを裏付けた形となりました。
集中治療室 全国でベッド不足
赤ちゃんを対象にした集中治療室「NICU」について、東京をはじめ全国でベッドが足りないとして、厚生労働省の研究班はことし3月、早急に増やすよう求める報告書をまとめていました。
研究班によりますと、NICUは全国におよそ2000床のベッドがありますが、低体重と呼ばれる状態で生まれる赤ちゃんが増えたことに加え、医療技術の向上で生まれてすぐに亡くなる子が減っていることなどから、現在の1.5倍の3000床必要だとする試算をことし3月、まとめています。
このうち、東京都内にはNICUのベッドがおよそ200ありますが、地域的に偏りがあるうえ、100床程度は足りないということです。
研究をまとめた東京女子医科大学の楠田聡教授は「リスクの高い患者が増えているのに対し、お産にかかわる医師が減っているため、医療体制づくりが追いつかない状態で、都内でもついにこうした問題が起きてしまった。地方だけでなく、東京都でもお産をめぐる周産期医療の崩壊が現実になったといえ、NICUの増設と専門医の育成を急ぐべきだ」と話しています。
※このニュースは10月23日20時00分時点でのものです。
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