
脳内出血を起こした東京都内の妊婦が都立病院などに受け入れを断られて死亡した問題で、慢性的な産科医不足に悩む広島県内の病院は「人ごとではない」と受け止める。高度な医療が可能な「総合周産期母子医療センター」などの医師の勤務は過酷で、専門医の確保や搬送を円滑化する対策が急務だ。
母体・胎児集中治療管理室がある「総合周産期母子医療センター」は、都道府県が指定する。県内は県立広島病院(広島市南区)と広島市民病院(中区)。両病院とも複数の医師が24時間態勢で交代勤務し、当直医1人だった都立病院より医師数は多い。
ただ、広島市民病院の「総合センター」主任部長の林谷道子医師は「このまま医師が増えない実態が続けば、広島でもいつ同様の惨事が起こるか分からない」と危機感を示す。
センターのベッド数は66床。昨年度は妊婦と新生児を合わせ計1651人を受け入れた。うち359人は三次、東広島など市外を含む他の産院から、妊婦または新生児が緊急搬送されたケースだった。受け入れられなかったケースは昨年7件。いずれもベッド数が満床だったためだ。
診察に当たる医師は16人。夜間は新生児担当2人、産科医1人が当直する。林谷医師は「宿直は3日に一度の頻度。一人でも倒れたら回らなくなる」と明かす。
【写真説明】広島市民病院の新生児集中治療管理室。医師不足の中で24時間態勢のケアを続ける
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