ホテルのバーは安いんだよ、という麻生首相のせりふが的を射ているのかどうかは知らない。が、ちゃんと仕事をしているのなら、一国の宰相が葉巻をくゆらせてグラスを傾けることに、さほど目くじらを立てることもあるまい 連夜のホテルでの会食とバーでの憩いは、多くの人には縁遠い。あこがれであり、夢でもある。もし2億円の宝くじが当たったなら、そんな夢もかなう 「宝くじ殺人」の犠牲になった岩手の女性は、どんな夢を見ていたのだろう。幸せを追いかけて、不幸がやってきた。授業で習った「人間万事塞翁(さいおう)が馬」を思い出す。とりでの老人と馬をめぐる中国の故事である ある日、飼い馬が逃げ出した。悲しんでいると、良馬を連れて戻ってきた。喜びもつかの間、息子が馬に乗って大けがをした。再び嘆き悲しむうちに、戦が起こった。男たちの大半が戦死したが、体の不自由な息子は出兵を免れ、命拾いした 心のすさむ今の世は、試練と幸運とを呼ぶ馬が、いきなり殺人者を連れてきた。山と谷を繰り返すはずの人生の残酷な幕切れに、中国の賢人も言葉を失うに違いない。
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