インドが初の無人月探査機「チャンドラヤーン(月の乗り物)1号」を打ち上げた。地球軌道の外へインドが探査機を飛ばすのは初めてである。
月探査機の打ち上げはロシア(旧ソ連)や米国、日本、欧州宇宙機関(ESA)、中国に続き六番目になる。月に到達すれば日本の「かぐや」と同じく高度約百キロの軌道から、二年間にわたり観測するそうだ。
世界に技術をアピールし、衛星ビジネス参画を狙うというが、探査項目には「鉱物分布」も入っている。月にはチタンや鉄など多くの資源があるとされる。獲得の思惑は当然あろう。もっともかぐやの探査項目にも鉱物探しがある。
一九八四年発効の「月協定」は、月の資源開発を想定した条約だ。宇宙航空研究開発機構のホームページから邦訳が探せた。「月及びその天然資源は人類の共有財産」とし、可能になれば開発を律する国際的な枠組みを設けると、明確に規定している。
ところが、枠組みづくりはまったく進んでいない。それどころか米国や中国、インドなど月探査機を飛ばしている国はどこも月協定を批准さえしていない。日本もだ。
月の資源開発というかつてのSFが現実になりつつある。それなのに、肝心のルールづくりが利害や思惑が絡んでいまだにSF的というのは、情けない限りだ。