今年1~9月の和歌山市消防局の救急出動件数が1万2194件で、前年同期に比べ1067件(8・05%)減った。入院の必要のない軽症者の搬送増を背景に6年連続で増加していたが、歯止めがかかった。市消防局警防課は「市民の理解と協力で減少した。これからも啓発を続けていきたい」としている。【山下貴史】
同課によると、07年の救急出動件数は1万7662件に達し、10年前と比べ1・6倍。搬送者は1万6574人だったが、軽症が1万617人で64%を占めた。さらに、急病を理由に救急車で運ばれた9868人のうち6160人は軽症で、2428人は自力で歩けた。通院のために利用する事例もあり、重症者への対応の遅れが懸念されていた。
このため今年3月から、出動増加を周知する広報活動を開始。出動回数が9月まで毎月16~255件減った。搬送人員も1万1505人で前年同期比943人減。搬送した軽症者も同728人減り、7282人となった。
一方で、今年5月には、ある消防署管内で軽症者を搬送中、心肺停止状態になった60代の男性への出動要請がかかった。別の管内から駆け付けた救急車が男性を病院に運んだが、亡くなったという。
同課の山本正昭・救急班長(救急救命士)は「本当に必要な場合はちゅうちょしないでどんどん利用してほしい」としながらも、「1分1秒を争う場合もあるので適正な利用をしてほしい」と話す。緊急性のない転院搬送などは、民間事業者の有料サービスを利用するよう働きかけていくという。
毎日新聞 2008年10月23日 地方版