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「医師のキャリアパスを国民に見せる」―舛添厚労相インタビュー(下)

 「今は医師がどう養成されているかが国民に見えていない。医師のキャリアパスを見えるようにすることが必要だ」―。舛添要一厚生労働相はインタビューの中で、医師のキャリアパスを透明化するための議論を、次回の「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」で始める考えを明らかにした。また、医療崩壊の進行を食い止めるには、医療界が国民に対して同じ目線で積極的に情報発信し、分かりやすい存在になっていくことが必要だとした。(熊田梨恵)

【今回のインタビュー】
医師の計画配置は「憲法違反」―舛添厚労相インタビュー(上)

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―厚労省と文部科学省による「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」で実施する調査は、医学部生や研修医などが対象です。医師の養成について、今後必要だと考えていることは。

 次の段階では、大学の研究者や教授といった教える側の意識を聞きたいです。「あなたの指導がうまくいっていると思いますか」と。産科や外科も素晴らしい授業や教え方をすれば意味があります。教えることがうまい人と、研究がうまい人は別です。特に医学部の実習だと、教えることが上手な人でなければいけません。

 卒後の臨床研修制度の内容が、卒前の臨床研修とかぶっているため、2年間を1年に短縮できるという考えも大事ですが、重なっている内容を排すればよいかというと、そうではありません。学部レベルの教育水準をある程度上げなければ、減らす分をカバーできません。その上で卒前研修が充実すれば、卒後研修を短縮できるでしょう。


―医師の養成数を増やしても、ほかの業界に魅力を感じて就職し、臨床現場などに就かないということも考えられます。医師のキャリアパスについてはどう考えますか。

 どのように医師が養成されているかが、国民に見えていないので、分かりやすくする必要があります。法曹界の方は、司法試験に合格すれば裁判官や検事になるなど、まだ見えています。医師については「インターン」という言葉を何となく知っているぐらいでしょう。大学に入ってから一人前の医者になるまでのプロセスについて、フローチャートを示したパンフレットや、「医者の一生」のような物語などを作って国民に見せていく必要があります。厚労省か文科省でやるか、森喜朗元首相が会長を務める自民党の「医師臨床研修制度を考える会」で作ってもらってもいい。まさに一つのアウトプットになります。次回、11月18日の検討会でやりたいと思っています。医者の養成とはどのようなものか、わたしたちで原稿を作って公にするだけでも発信することになります。


■縦割りの文教・厚労族を動かした

―今回、厚労省と文科省による合同の検討会が初めて立ち上がりました。その意義や背景をあらためて教えてください。


 医師の養成は厚労省と文科省がシームレスに連動している部分なので、問題があれば、文科省が担当する学部カリキュラムの部分、厚労省が担当する卒後研修や病院の部分など、両方でやらないといけません。だから今回は、文教族のねじを巻きました。宮路和明自民党衆院議員が幹事長を務める「医師臨床研修制度を考える会」から、「医師数を1.5倍にするのは10年計画だから、何か目先でできることはないか。臨床研修制度の2年間を1年間に短縮すれば、単純計算で一年間分の医師8000人が増えるのでは」という声が上がりました。そこで、「あなた方がそこまで言うなら、文科省自身が変わらないといけない。文科省と厚労省と合同でやろう」と言いました。また、文科相は最近たて続けに3人代わりましたが、皆に「続けてほしい」と言ってきました。文教族と厚労族は全然協力せずに跋扈(ばっこ)してきて、全部縦割りでやってきていましたが、今回はそこを動かして両方でやってもらいました。こうしたあらゆる問題を噴出させることがよいのです。すぐには片付かないかもしれませんが。


■医師会は国民と断絶している

―今、医療崩壊が進んでいます。今後、医療界はどうしていくべきと考えますか。

 医療界はもっと情報を発信し、国民と対話してほしいです。はっきり言えば、医師会はこの前の参院選で一人の候補者すら当選させることができませんでした。それに対する反省がありますか。選挙の1年前から武見敬三さんのポスターがあちこちの病院内に張ってあったのを見ましたが、おじいさんやおばあさんが毎日見ていながら、なぜ当選できなかったのでしょうか。わたしのポスターなんかどこにも張ってありませんでした。100万票あると言いながら、20数万票しか取れないということです。おまけに茨城県医師会みたいな「反乱軍」も出ています。謙虚に国民の声を聞いて改革しなければ、二度と医師会から参院議員は生まれません。これは国民との断絶があるからです。組織の中だけ見ていないで、変えるべきは変えねばなりません。新型インフルエンザなどが来た場合、地域の医師会がしっかりしてくれないと、末端までの医療ができません。彼らがきちんとしてくれれば、厚労行政の改革にもつながります。

 後期高齢者医療制度についても、批判を受けたからわたしが「変える」と言いましたが、医療界もちょっとは反省しなさいということです。医師会は制度のPR活動も何もやりませんでした。例えば、医師会が毎日みのもんたさんの番組に出てくれましたか、ということです。国民と対話しなければ、組織自体が駄目になります。


■勤務医も情報発信すべき

 勤務医も同じです。「苦しい、苦しい」と言っていますが、そうした状況は「福島県立大野病院事件」が起きて初めて分かったことです。そうでなければ、もっとひどい状況が続いていたでしょう。なぜ言わないのですか。普通の国民と同じレベルに立って、もう少し情報発信しなさいということです。医者、医学会、医療界だけが特殊じゃありません。あなたたちも働いてご飯を食べています。そこは変わりません。一般性を出すということです。国民の目線を入れない改革案は全部つぶれます。特にこういう「メディア民主主義」のようになってくるとなおさらです。わたしもいろんな改革をやるから協力してください。そうしないと医療界は生き残っていけません。


■医療改革の実績を残す

―今、政局の先行きが不透明です。今後、衆院の解散・総選挙などで厚労相が変わることがあれば、この改革はどうなりますか。先日、「トップが変わっても、自分がつくったものは変わらないようにする」と言われました。

 衆院の解散・総選挙がどうなるかわたしにも分かりませんが、きちんと実績を残していくことが重要です。医師数を1.5倍に増やすと言いました。次の厚労相が閣議決定をひっくり返すということは言えません。介護でも同じようにやりたいです。自民党が政権を取っている限り、主立った議員が絡まっているし、わたしが厚労相を辞めても「おれがやったことをひっくり返すな」と言って影響力を保持できます。野党が政権を取ることがあれば、民主党の山井和則衆院議員や長妻昭衆院議員みたいに、片っ端から質問できます。一番大事なのは議事録を残し、発言を残し、方向性をきちんと残しておくことです。次回、11月18日の合同検討会では、医学部生らに対する意識調査の中間結果を出します。わたしは医療界を再構築していくための改革を続け、議論した内容をきちんと残していきます。



医師の計画配置は「憲法違反」―舛添厚労相インタビュー(上)


更新:2008/10/23 19:33   キャリアブレイン


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