北朝鮮に対するエネルギー支援で日本が支援を留保する重油20万トン相当を米国が豪州に肩代わりさせる方向で調整が進んでいることは、6カ国協議での日本の発言力低下につながる恐れがある。米国の北朝鮮へのテロ支援国家指定解除によって日本外交はダメージを受けたばかり。米主導の「日本抜き」のエネルギー支援の動きが6カ国協議の枠組み拡大論に点火すれば日本が主張する拉致問題の解決の先行きにも悪影響を与える可能性がある。
エネルギー支援の肩代わりに関し外務省幹部は21日、「他国が出すならば日本は『どうぞ』と言うだけだ」と語り、拉致問題の進展がなければエネルギー支援を行わない方針に変更はないと強調した。
しかし、テロ支援国家指定が11日に解除されて以来、他の6カ国協議の関係国が日本に支援を求める圧力が強まったのも事実。外務省幹部の強気の発言は追い詰められた日本政府の窮状の裏返しでもある。6カ国協議で日本が最重視してきた米国との協調も指定解除できしみが生じたうえ、拉致問題とエネルギー支援の板挟みで身動きが取れず「孤立感」も漂い始めている。豪州へのエネルギー支援肩代わりは6カ国協議の枠組みを広げ、日本には圧力とも映る。
こうしたことから、日本は6カ国協議の北朝鮮非核化のプロセスに非協力的と受け取られる事態を避けたい狙いから、核廃棄に必要な資金・技術を供与する方向で検討を進めている。【大谷麻由美】
毎日新聞 2008年10月22日 東京朝刊