黒煙浮かぶ死角・個室ビデオ店放火(上)急増「中年ニート」

 
              
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黒煙浮かぶ死角・個室ビデオ店放火(上)急増「中年ニート」

2008/10/23配信

小川被告が卒業アルバムに寄せたメッセージ
小川被告が卒業アルバムに寄せたメッセージ

七・三に分けた髪に、きゅっと口元を締めた少年。寄せ書きには「最善を尽(く)そう」と記し、実直さをうかがわせる小川和弘被告(46)の中学の卒業アルバム。それから30年余。16人もの犠牲者を出した火災を起こした小川被告に、当時を知る知人らは「なぜあの子が」と驚く。

 高校卒業後、大手電機メーカーに入社。帰宅後も社内試験に向け深夜まで勉強し、母親も息子のことを誇らしげに話していたという。結婚し2子をもうけ、一戸建てを購入。「一家で仲良さそうに散歩することも多かった」(近所の男性)

 だが、ギャンブル好きが高じ、離婚。2001年にリストラを機に自主退社した後は定職に就かず、酒やギャンブルに貯金や退職金をつぎ込み、04年に母親を亡くしてからは遺産も使い果たした。知人は「生きる目的を見失っていた」と話す。

 「中年ニート」。人生の目的を持たず、働きも、学びもしない中年世代を、総務省統計研修所の教官、西文彦氏はこう呼ぶ。無就職、無就学の35―44歳は、07年に35万人と01年の2倍以上に増加。こうした中年ニートが自暴自棄になって凶行に走るケースも目に付く。

 今月中旬、津市内で高校生と小学生の姉妹に軽乗用車を突っ込み重軽傷を負わせたとして逮捕され、「世の中が嫌になり、警察に捕まり楽になりたかった」と供述した男(43)は、5、6年ほど前から無職。懸命に職を探した時期もあったが、かなわず次第に無気力になっていったという。

 凶行に至らないまでも自殺願望を募らせる中年ニートも。「自分の生き方が情けなくなり、寂しさから人を巻き込んで死のうと思ったことがあった」と打ち明ける京都府出身の男性(38)は、国立大学卒業後に勤めた物品販売会社を数年で退職。再び定職を持つ気がわかず、わずかな貯金を手に居候する友人宅とパチンコ店を往復する毎日だ。

 神戸女学院大大学院の内田樹教授は「若いころに自立する心が十分に育っていないために意欲を持てない『おじさんの外見をした赤ちゃん』が、周囲の事を気にせず安易に火を付けたのでは」と放火事件を分析。「日本の教育や社会が生み出したともいえる未熟な大人は増えており、事件は決して人ごとではない」と話している。

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 大阪・ミナミの個室ビデオ店放火事件で浮かび上がった社会の死角を追う。
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