JR東海が自社で建設し二〇二五年に営業運転開始を目指すと表明したリニア中央新幹線が、実現に向けて動きだした。ゴールまでにはまだ時間がある。焦らず着実に課題を解決してもらいたい。
今は試乗はできないが山梨県大月市と都留市を走る「リニア実験線」は子どもたちの人気の的だった。最初はゴトゴトとタイヤで走るが瞬く間に時速五百キロのスピードに達する。疾走音はジェット機と同じだ。
同社と鉄道建設・運輸施設整備支援機構が連名で二十二日に国土交通省へ提出したリニア新幹線の東京都−大阪市間の地形・地質調査報告書は、「適切な施工方法等を選択することにより、路線建設は可能」と明記した。
これを受けて国交省は年内にも供給輸送力や技術開発、建設費用など残る項目の調査を指示する方針だ。焦点の建設ルートの一本化や中間駅をどこに置くかなどJR東海は関係自治体との調整を始めることができるようになる。
現状ではまだ夢の計画だが実現に向けた第一歩を踏み出した。
最大の難問はルートの決定だろう。自民党幹部は「中央新幹線は国家プロジェクト。民間のJR東海が何を造ってもいいということではない」とくぎを刺す。長野県は「地域振興は当然で(南アルプスを北側に迂回(うかい)する)Bルートでやるなら協力が可能」と直線ルートは許さないとの姿勢である。
建設費は当面の東京−名古屋の約五兆一千億円を同社が全額自己負担すると表明している。難工事で建設費が予想以上にかかった場合や、今後の景気後退と少子化社会などの影響はどうなるのか。綿密な計画がいずれ必要だ。
需要予測も大丈夫か。リニアは飽和状態にある東海道新幹線のバイパスと位置付けているが、十七年後の営業開始時に現在以上の輸送需要が見込めるのか。リニアを大阪まで延伸するとすれば、航空機との競争も激しくなろう。
超電導磁気浮上技術とリニアモーターカーの実用化技術は確立したと自信を示す。だがシステム全体の安全性確保に加え、地下五十−百メートルもの大深度を時速五百キロで運転すれば予測不能なことも起こり得る。路線全体の八割がトンネルとなるだけに、利用客の心と体をしっかりと守る対策は絶対条件である。
課題は山ほどあるが東京−大阪間を一時間で結べば社会が劇的に変わる可能性がある。課題を克服して夢の実現を目指すべきだ。
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