日本の不良債権処理の教訓を米国は学べ、という声が強い。だが日本は危機を10年以上続けたのであり、自慢できる話ではない。
それに引きかえ日本同様バブル発生と崩壊を経験した北欧は、処理の透明性、迅速性、明確性で評価が高い。
「失われた十年」を経た日本では、バブル崩壊で国中が内向きになったという。人と人の信頼関係が崩れ、ぎすぎすした社会になった。外国人の受け入れに冷たく、ODAによる国際貢献も減らす一方だ。1人当たり所得も先進国の中位に低下した。
バブル崩壊で内向きになるのなら、北欧もそうなったのか、フィンランド、ノルウェーを9月に見てきた。
だが人々は、ほっとするほどさわやかだった。信頼関係があり、人間味豊かな人々だ。外国人受け入れでは、普通の生活ができるまで、まわりがすべて教えるルールだった。
そして社会の仕組み自体が、考えて行動するようになっている。何ごとも指示待ちの日本とは大違いだった。
北欧はバブルを迅速に処理したため、次の構造改革にも成功し、1人当たり所得は世界の最高水準を維持している。このため社会に、ある一定のレベルに達したという安定感がある。
これらの北欧の良さの多くはかつて日本にもあった。「失われた十年」で失ったものは実に大きいと感じた。
北欧でも世界金融危機の影響を受け、新聞には株価急落の見出しが躍っていた。フィンランド中央銀行は、国内金融機関は健全と発表した後、ユーロ圏共通の緩和策をとり、ノルウェーも追従した。日本は世界金融危機で北欧同様余裕があるが、それならば内向きを捨てて、北欧の良さを改めて学ぶべきだ。(曙光)