2億円の宝くじに当せんした岩手県一関市の無職、吉田寿子さん=当時(42)=を殺害したとして、殺人容疑で逮捕された東京都台東区、朝日新聞販売所従業員、熊谷甚一容疑者(51)は派手な暮らしぶりとは無縁の生活を送っていた。仕事ぶりは真面目で、周辺に引っ越しのあいさつをするなど律義な面もあったが、近所の住民とのトラブルも抱えていたという。
【写真で見る】逮捕された熊谷甚一容疑者
岩手県住田町出身の熊谷容疑者。事件当時は岩手県内で生活していたとみられるが、2年前に上京し、今年8月初旬に東京・上野近くにある8階建ての賃貸マンションに引っ越してきた。
「3人で住むのでよろしくお願いします」。熊谷容疑者は60代の主婦宅に菓子折りを持ってあいさつに来た。外国人とみられる40歳ぐらいの女性と女児と3人暮らしだったという。
近所の女性は「会えば向こうからあいさつしてくる人で、悪いことをする人には見えなかった」と驚く。
マンション管理組合の事務代行している60代男性によると、熊谷容疑者の住む6階の3LDKの家賃は管理費込みで月16万8000円。滞納はなく、月末に翌月分をきちっと支払っていたという。
「服装も派手じゃなくて、金を持っていたようには見えなかった。何度か顔を合わせたが、子供をかわいがるなど家族を大事にしている様子で、まさかそんな凶悪なことをしている風には見えなかったのに…」と男性。
一方で、日曜日になると部屋に知人を呼んでパーティーを開いていたといい、騒音の苦情が管理人に伝わっていた。バイクをマンションのゴミ捨て場近くに無断で止めることもあり、住民と口論となることもあったという。
勤務先だった朝日新聞の販売所「ASA鶯谷」の橋倉幹洋所長(43)によると、熊谷容疑者は平成18年9月19日から同店に勤務。「雑誌の求人広告を見てきた」と同店を訪れ、岩手から上京した理由については「携帯電話の販売会社を経営していたが、事業に失敗した」などと説明していたという。
朝夕刊の配達を担当していたが、無断欠勤もなく、勤務態度は真面目。21日午前8時半の朝刊配達後に熊谷容疑者から突然「休みたい」と連絡があり、22日午後10時ごろ、岩手県警から逮捕の連絡があった。橋倉所長は「それまでに休んだことがなくおかしいと思った。信頼していただけに残念」と話していた。
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