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妊婦の死亡 繰り返さないために

10月23日(木)

 東京都内で、激しい頭痛などを訴えた妊婦が、都立墨東病院など7カ所の医療機関に診療を断られた末、出産後に死亡していた。

 救急搬送の妊婦の受け入れ先が決まらず、手当てが遅れて死亡したり、死産となる事例は、繰り返し起きている。残念でならない。

 問題の根本には、深刻な産科医不足がある。国は本年度、医師の増員にかじを切ったものの、医師が育つまでには10年ほどかかる。

 いますぐ取り組むべき課題が、救急の充実と、緊急事態に24時間対応できる診療機関の確保だ。こうした事態を2度と繰り返さない決意で、行政と医療関係者は対策に全力を挙げるべきだ。

 今回の特徴は、医師が比較的確保しやすいとされる東京で起きたことにある。墨東病院は地域の産科救急の拠点でもある。産科医不足はその「とりで」さえ揺るがしている。問題の根は深い。

 国は、周産期医療の拠点として複数の産科医を配置し、24時間態勢で受け入れる「総合周産期母子医療センター」の整備を促している。長野県では安曇野市の県立こども病院がある。墨東病院は都内のセンターの一つだった。

 妊婦のかかりつけの産婦人科医院から受け入れを求められたとき、墨東病院はいったん断っている。産科の当直は当時、研修医1人だった。産科医の退職などにより、複数の医師を配置できない時間帯があったという。

 医院はほかの6カ所の医療機関にも打診したが、いずれも断られた。墨東病院に再び要請し、病院が受け入れるまでに1時間ほどたっていたという。

 医院から墨東病院に最初の受け入れ要請があった時、どのようなやりとりがあったのか。ほかの6カ所が断った理由は何か。詳しい調査と分析が必要だ。

 産科医不足は地方でより深刻だ。なのに、救急患者を受け入れられない事例は首都圏や近畿圏で目立つ。消防庁の全国調査である。

 医療機関の多い都市部でかえって受け入れ先が決まりにくい。窓口の一元化や医療機関の連携などで、責任を持って引き受ける場所を確保すべきだ。

 長野県では、県立須坂病院で産科医2人を確保できるめどがたち、休止していたお産の扱いを再開する見通しがたった。県と地元で地道な努力を重ねた結果という。

 産科医の確保に即効薬はない。地域医療を支える勤務医の待遇の底上げなど、長い目で安心して働ける環境整備が欠かせない。

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