年末商戦を前にして、出版社の企画は目白押しだが、書店の現場で泣いている社員さんがいる。社に電話が入ったのは昨日。
「記事の問合せで書店さんから電話が入っています」と内線があり、私が出ることになった。受話器の向こうでは「あの記事なんですけど、私は50部を強制的に買わされ、会社から請求書が来ているんです。新文化では記事で読者へ販売するみたいなことが書いてありますが、実際は社員が買っている事実を貴方はご存知ですか」と力なく静かに話す男性がいた。
聞けばいろいろ出てくる。書店名も自分の名前も全て打ち明け、綺麗ごとじゃない現実を私にぶつけてくる。社員やバイトが強制的に買わされるのは販売ノルマではなく、服従しなければいけない「割当て」で、それも1点ではないらしい。
モノが言えない社内事情から断われないその社員さんはまた、身を削っていくことになる。高くない給料がまた減っていくということである。知り合いに売れず、残った本は100円で捌くか、全部捨てるという。
その社員さんの勤め先は全国でも名の通った有名な書店で、その社長は私もよく知っている方だった。それは明らかに内部リークだった。でも、「だから私にどうしろって言うんだ」という思いと、「なんとかしなきゃ」という思いが交錯する。
たくさん売れば報奨金の額も率も良くはなるかもしれない。しかし、肝心の社員・スタッフさんが労働意欲を失くしてしまえば何にもならない。社長が出版社からもらってくる感謝状だって社員さんは喜ばないだろう。
社長、厳しい環境は充分わかりますが、ここは何も言わず、黙って止めてもらえませんでしょうか。
社長 丸島基和
(2008/10/22)
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