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【社会】7病院拒否 妊婦死亡 『頭痛』で食い違い2008年10月23日 07時04分
脳内出血を起こした東京都内の妊婦(36)が計七カ所の医療機関に受け入れを断られて、三日後に死亡した問題で、この妊婦は当時、かかりつけの産婦人科医院に「尋常ではない頭痛」を訴えていたことが二十二日、分かった。この医院は最初に受け入れを要請した都立墨東病院(墨田区)にも症状を伝えたというが、墨東病院は「脳内出血の症状の認識はなかった」と説明、食い違いを見せた。 「五の橋産婦人科」(江東区)の川嶋一成院長(49)によると、今月四日午後六時ごろ、妊婦の夫から同医院に「妻の下痢と嘔吐(おうと)がひどい」と電話があった。 妊婦は同五十二分、夫に付き添われ救急車で医院に到着。すでに猛烈な頭痛を訴えていた。「『痛い痛い痛い』と極めて激しく、いったいどこから来る痛みかと思った」という。頭痛は救急車を呼んだ同六時半すぎから起きたという。 同医院は救急車を待機させ、同七時ごろ、墨東病院に電話で受け入れを要請。「嘔吐と下痢から始まり、激しい頭痛が起きている」と症状を伝えた。 しかし、墨東病院周産期センターの林瑞成・産科部長は会見で、この時点では「下痢と嘔吐があり、頭痛も少しある」という症状と認識したとし、「脳内出血という認識はなかった」と強調。最初の受け入れ要請を拒否したのは「妥当な判断だった」と述べた。 墨東病院は、医師不足のため今年七月から土・日曜と祝日の産科医当直が一人だけで、原則として救急搬送を断っていた。また林部長は妊婦の病状について「初めの症状から、あっという間に悪化した」と説明。「(受け入れが)一時間早くても、状況に変わりはなかった」と弁明した。 ■『拒否3、4回は普通』かかりつけ医 妊婦のかかりつけだった五の橋産婦人科の川嶋一成院長は二十二日夜、記者会見し「ご遺族の意志を無駄にしたくない。複数の科にまたがる母体搬送の厳しい現状を打開されるよう願う」と険しい表情で話した。「今後、子どもの顔を見ることができない母親を二度とつくってほしくない」という妊婦の夫からのメッセージを紹介した。 墨東病院側が「脳内出血の認識はなかった」と説明していることについて、担当した塩野結子医師(38)は「墨東病院には最初の連絡の段階で、脳内出血という言葉は使わなかったが『妊婦は頭を抱えて七転八倒して頭痛を訴えている』という尋常ではない状況を説明している」と反論。緊急性についても適切に伝えたと強調し「私たちの対応は妊婦のご主人と待機していた救急隊が一部始終見ている」と述べた。 川嶋院長と塩野医師は墨東病院出身。受け入れを打診した墨東病院の当直医とも顔見知りという。塩野医師は「救急搬送が頭部の疾患が理由であることは(墨東病院側が)理解していると思った」と話した。一方で「(墨東病院側に)伝わらなかったのなら、問題だったかもしれない」と沈痛な面持ちで語った。 複数の病院に断られたことに「みんな頑張っているとしか思えなかった」と塩野医師。「最も近い拠点病院の墨東病院で土、日の当直医が一人なのは、不安を感じていた」と話した。 五の橋産婦人科から墨東病院に搬送されるまで一時間二十分かかり、妊婦は救急車内で意識を失った。川嶋院長は「通常でも妊婦の救急搬送で受け入れ先の病院に三、四回断られることがあり、一時間前後というケースは多い。都内でも産科医不足を目の当たりにしている」と、やるせない表情をみせた。 (東京新聞)
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