季節感あふれるスケッチ、生々しさを伝える事件・事故の現場、力を込め思いを語るインタビュー…と日々さまざまな写真が紙面を彩る。今の世の喜怒哀楽を写し、記事を引き立ててくれる写真だが、撮影では実に多くの失敗をしてきた。
最近は、デジタルカメラのバッテリー切れや機械の不具合で困ったが、駆け出し時代にはフィルムを入れ忘れてデスクに大目玉―なんてこともあった。その結果、写真なしの記事になったり、取材先にも読者にも申し訳ないような写真を掲載したことは、いまだに悔やまれる。
このところ、こんなミスだけでなく、プライバシーや著作権などさまざまな要因が絡み、思うように掲載できないケースも増えてきた。特に学芸関係の記事では、絵画や楽曲といった作品、作家の肖像などに関して、作者や管理・所有者の権利が発生する。
例えば、井原市出身の彫刻家平櫛田中の代表作「鏡獅子」を撮ろうとしたときのこと。遺族や展示している国立劇場の許可は取れたものの、所蔵する東京国立近代美術館から撮影料を求められた。法外な料金ではなかったが、権利意識の徹底ぶりに少し驚いた。
このように撮影するにも、さまざまな関係者がいる。現代社会では作品の芸術的価値を守るだけでなく、著作権を含む知的財産権に対する考え方が厳格になってきている。写真一枚とはいえ、メディアの一翼を担う新聞として、十分に配慮しなければならない時代になっている。
(文化家庭部・金居幹雄)