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リニア新幹線 「直線」ありきでなく

10月22日(水)

 リニア中央新幹線構想が実現に向けて一歩前進した。JR東海などがルート選定のための地形・地質調査の結果を自民党の特命委員会に説明し、了承された。報告書がきょう、国土交通省に提出される。

 木曽谷回りのA、諏訪・伊那谷回りのB、南アルプスを貫く直線のC−の3ルートすべてについて「施工上の留意点はあるが、路線建設は可能」との内容だ。

 これからルート選びが本格化する。Bルートを要望している長野県に対し、JR東海は直線のCルートを想定している。両者の隔たりは大きい。

 国家的プロジェクトだ。日本の大動脈にどちらがいいか、見極めなければならない。公共交通として利用しやすいよう、中間駅を含めて地元との調整が欠かせない。JR東海は、県の意向をじっくり聞いてもらいたい。

 足踏みしていたリニア計画は昨年末から動きだした。JR東海が建設費の約5兆1000億円を全額自己負担し、2025年に首都圏−中京圏間の開業を目指す方針を明らかにしたからだ。

 JR東海が想定しているのは直線ルートである。最短距離になるため建設費を抑えられ、乗車時間を短くできるとみられている。民間企業の論理と言える。

 しかし、単純に東京−大阪間を短時間で結べればいい、というものではないだろう。もし直線ルートに決まれば、諏訪や上伊那地方は路線から外れてしまう。活性化を願う住民の願いに背く。

 JR東海の松本正之社長は、地元との調整について「まず話を聞き、私どもがどういう計画、構想を考えているか話したい」と述べた。用地買収などで地元の協力が必要になる場面もあるだろう。信頼関係が大事だ。直線ルートありきで進めないでもらいたい。

 これまでのところ、長野県とJR東海は互いに距離を置いてきた。JR東海に対し、村井仁知事は「県に正式な説明もない」と不快感さえ示している。

 計画を実現させたい、との思いは県もJR東海も同じだ。感情的なわだかまりが募るようでは、計画の先行きも見えにくくなる。早く、話し合いのテーブルを設ける必要がある。

 乗り越えるべきハードルは多い。活断層周辺での掘削に伴う地盤の変形やわき水、一部の水利用への影響などが留意点に挙げられている。自然環境への配慮も重要だ。実現へ、しっかりとした整備計画を練り上げたい。

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