「事態を詳しく調べてみなければ分からないが、東京でこんなことが起こるなんて」。産科医や救急医不足が深刻化する中、比較的医師数が確保されているとみられていた東京都で起こった搬送拒否に二十二日、厚生労働省の担当者は驚きを隠せない様子だった。
妊婦の救急搬送受け入れをめぐっては、二〇〇六年八月に奈良県で意識不明になった妊婦が十八カ所の病院で受け入れを断られた末に死亡するなど、搬送先が決まらず手遅れとなるケースが相次いだ。
背景には、深刻な産科医不足があり、国は基幹病院を指定して、重点的に産科医を配置したり、手薄な病院に臨時に派遣したりするなど、対策に乗り出している。
特に今回問題となった都立墨東病院は、国が周産期医療の対策の一環とする総合周産期母子医療センターに指定されていただけに、問題の深刻さが浮き彫りになった。
基幹病院の指定の他にも、国は訴訟の多い産科を医師が敬遠する傾向にあるため、医師の過失の有無にかかわらず、脳性まひの赤ちゃんを救済する出産時無過失補償制度なども創設しているが、救急などと並んで勤務条件が過酷な産科医の現場離れには歯止めがかかっていない状態だ。
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