MOOCS TOP > 特集 > MOOCS POWER PUSH > Vol.023 エレファントカシマシ
前作「桜の花、舞い上がる道を」に続く、エレファントカシマシが送る、季節感溢れるニューシングル。
変わりゆく季節と人生をテーマに東京の町で光溢れる輝きを求めて「キミ」と歩いてゆこうと力強く訴えかけるラブソング。
Voの宮本浩次に、曲について聞いた。
text by:yassi
宮本「曲自体ができたのは、もう4〜5年前ですね。『扉』というアルバムの頃から、曲は書き溜めているんですよ。時間があってもやることがなかったから、曲を作っていると安心したというか(笑)。
そこでできた曲を、石くん(石森)に録音してもらったりして、毎日を過ごしてたんです。当時は、“光は感じていても、その光がなんだか分からない”というところがあって。
「俺たちの明日」や「笑顔の未来へ」で結論付けられたものから、まさに新しい季節に移っていく、“グラデーション”ということなんでしょうかね。」
宮本「自分の中での、いわば常套句なんですよね。『DEAD OR ALIVE 』(2002年)というミニアルバムの中に、「漂う人の性」という哲学みたいな歌が入っているんですが、そこにも<見渡す街の灯りは変わらなく見えても 昨日までとは違う よろこびに飢えた人>という歌詞があって。
“ロマンチックでキラキラしていた東京の街並みが、なぜこんなに味気なく思えてしまうんだろう”って、ずっと考えてきたんです。今見る東京の街並みは、きっとそんなに輝いていない。でも、確かに光はあって。
「FLYER」という曲で、<あの水平線をたどって たぐり寄せたら 明日が笑いかけてくれるだろう>と歌っているのも、そういう意味ですね。」
宮本「「俺たちの明日」は、『DEAD OR ALIVE』から『町を見下ろす丘』まで、5枚のアルバムを経て得られた結論であって、次に進む準備ができた曲なんですよね。つまり、結論だけを言えば良かった時期で、自分たちの歴史や、仲間たちへのメッセージを、真っ向から表現する準備ができていた。
「笑顔の明日」もこの曲と表裏一体で、“迷わずに”結論を言った曲です。そして、その勢いの余韻が、「桜の花、舞い上がる道を」なんだと思います。その一連の流れでひとつの区切りがついて、いまは次の季節に移り始めているんだと思うんですよ。実際の季節と同じように、夏から秋に差し掛かっているというか。」
−「俺たちの明日」は、言葉はシンプルながら迫力がありました。今回の曲は、それより言葉遣いがやわらかいという印象がありました。
宮本「「今宵の月のように」には、<くだらねぇとつぶやいて>という言葉が出てくるし、「悲しみの果て」でさえ<いつもの俺を笑っちまうんだろう>という、強い言葉が出てくる。それに比べると、この曲はどこかセンチメンタルなんですよね。「漂う人の性」でも歌った憂いの部分が、言葉のやわらかさになって出ているんだと思います。」
宮本「自分としては、<風のように日々生きられたなら 俺しか知らない明日に 今すぐ飛んで行けるはず><365の光を心に全部集められたら>という部分に、グッとくるなぁと思ってます。
風というのは、“俺も鳥のように生きられたらなぁ”という漠然とした思いなんですけど、光というのはもっとリアリティがあって、「今宵の月のように」で歌っている<あふれる熱い涙>だったり、精一杯輝いて生きている瞬間だと思うんです。
自分たちの演奏で自分たちを鼓舞しながら、その光をもう一度探に行こうと。」
−そうしたメッセージが、バンドの演奏や楽曲のアレンジと上手く融合していますね。プロデューサーの亀田誠治さんとの作業はどうでしたか?
宮本「連綿と続くバンドの年季があって、それを前提にした亀田さんのアレンジなんだけど、歌詞やメロディが持つ世界をポップミュージックに昇華してくれて。
前作「桜の花、舞い上がる道を」でのやり取りで良い関係はできていたし、エレファントカシマシというバンドへの信頼を持ちながら、アレンジャーとしての手腕を発揮してくれましたね。」
宮本「誤解を恐れず言えば、1stアルバムから、僕はロックという言葉は使ってこなかったんです。
「ガストロンジャー」(99年)の時にあえて使ったことはあるんですけど、基本的にはポピュラーな音楽を、常に狙いまくっていて。「曙光」(92年)や「奴隷天国」(93年)という曲でさえ、僕は売るつもりでシングルにしましたからね(笑)。
売れる時もあればそうでない時もあったけれど、その精度は確かに上がってきていると思いますよ。」
宮本「<新しい季節>という言葉の中に含まれている希望や光って、僕もリスナーのみんなも、常に感じているものだと思うんです。今回の曲は、そこに行き着くための第一歩なのかなと。
みんなに一生懸命歌った、良い曲ができたので、ぜひ聴いてもらいたいですね。」