ブッシュ米大統領が欧州連合(EU)議長国フランスのサルコジ大統領、バローゾ欧州委員会委員長と会談し、金融危機対処のための緊急首脳会合(サミット)を米国で開くことで合意した。十一月四日の米大統領選後、早い時期の開催に向けて調整することになった。
主要八カ国(G8)のほか新興市場国も参加し、金融危機克服への各国の取り組みを点検、再発防止に向けた改革原則での合意を目指す。中国など新興国も成長鈍化や株価の大幅下落に悩まされている。
緊急サミット開催は、欧州が主導した観が強い。米欧首脳会談でサルコジ大統領が危機の震源地としてニューヨークでのサミット開催を提案し、バローゾ委員長は「国際金融の新たな秩序が必要」と訴えて米国中心の国際金融・通貨体制の再構築を目指す考えを示した。
今回の金融危機は、米国が先導してきた国際金融の枠組みが原因という認識が欧州やアジアなど世界に広がっている。一九九〇年代から急速に進んだ金融自由化、情報技術(IT)革新、グローバル化による金融資本主義の中心にあったのが米国だった。金融投資や消費拡大を進め、サブプライム住宅ローン問題でもグリーンスパン前連邦準備制度理事会(FRB)議長は「消費者のためになる」とリスクの高い人々への貸し出しを推奨していた。
欧州はヘッジファンドなどの規制や監督に前向きで、今回も危機収拾へ早い段階で金融機関への公的資金注入に動き、米国の背中を押した。だが、欧州の金融機関も米国流の金融資本主義に乗って利益拡大を図ったのは事実だし、欧州側にはこの機会に世界経済の中で米国に比べ低かった自らの存在感を高めたいという思惑もあろう。
対する米金融界には規制に対する反発が根強く、米政府自体過度の規制強化に警戒感を持っている。金融サミット開催では欧州に押し切られた形だが、自国の地位低下をこのまま看過するつもりもあるまい。
バーナンキFRB議長らも過去の金融政策に問題があったと認めており、新たな国際金融の枠組み構築は重要な視点だ。ただし、思惑や事情が違い、一気に進展ともいくまい。サミット参加各国は、一段の金融政策協調へ着実に踏み出すことをまず心掛けるべきであろう。
日本は今年の北海道洞爺湖サミットの議長国であり、九〇年代の金融危機を乗り切ってきた経験もある。金融サミットでも経験を生かして主導的な役割を果たす立場にある。
共同通信社による全国電話世論調査で、麻生内閣の支持率は42・5%と発足直後の九月下旬に行った前回調査を6・1ポイント下回った。経済政策への期待感の薄れが大きな要因で、麻生太郎首相の衆院解散決断の時期にも影響しそうだ。
調査は今月十八、十九両日行われ、千三十人の有権者から回答を得た。それによると、支持率の下落で不支持率は39・0%と前回を6・1ポイント上回った。どちらが首相にふさわしいかでは麻生首相が小沢一郎民主党代表に大きく水を開けたが、次期衆院選比例代表での投票先としては民主党が35・9%と自民党の32・7%を上回った。
新政権誕生の「ご祝儀」を考えれば低い支持率でスタートした麻生内閣だったが、約一カ月にしてより厳しさが増してきた。支持しない理由として最も多かったのが「経済政策に期待が持てない」の22・6%(前回14・9%)だった。
麻生首相は、物価高などに対応した総合経済対策を柱とする二〇〇八年度補正予算を成立させた。次いで、その後の世界的金融危機に対処するための追加経済対策を今月中に打ち出す予定だ。にもかかわらず期待感が高まらないことは、国民の暮らしや将来への不安感の強さをあらためて示したといえよう。
この調査結果によって政府・与党が追加経済対策を選挙目当ての「ばらまき戦略」にしてはならない。対策の効果が上がらなければ、状況を悪化させ、さらに信頼を損なうことになってしまう。日本経済を外需依存から内需主導への構造改革につなぐ実効ある対策が必要だ。
今回の調査で民主党をはじめ野党への評価が高まったわけでもない。与野党が、どんな安心のメッセージを届けるか、厳しく見極めたい。
(2008年10月21日掲載)